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2005年7月15日 (金)

小板橋二郎「ふるさとは貧民窟(スラム)なりき」(ちくま文庫)

 貧民窟という文字に釣られて買った一冊。筆者は昭和十三年板橋岩の坂生まれ。太平洋戦争を境に消滅した貧民窟の最後の姿。戦後に残ったのは由緒正しい被差別部落か朝鮮人部落だから、本来の意味での貧民窟の最後の姿。江戸時代の非人溜から帝都三大スラムという流れの、ある意味伝統的な貧民窟が大正~戦前の時期に解体され、はじき出された貧民が郊外に貧民窟を形成していく。この郊外型貧民窟の成熟期から戦争による崩壊までの数年間の姿が、昭和十三年生まれの記憶で綴られている。

 ギリギリ最後の証言という感じがするが、松原岩五郎「最暗黒の東京」や横山源之助「日本の下層社会」に見られる、貧乏人を哀れむ筆致を鋭く批判しているところは、流石は貧民窟育ちという感じで小気味よい。このような証言をする人々が帝都三大スラム世代にも居てくれたらと無い物ねだりをしたくなってしまう。

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