NHK新落語名人選「川柳川柳」(ユニバーサルインターナショナル)
超ロングセラーNHK落語名人選の新シリーズ。待ちに待った、企画ものではなくメジャーレーベルから出た川柳師のCD。演目は「テレビグラフィティ」と「ジャズ息子」の二本。
「テレビグラフィティ」
一九九五年放送。前半は「映画藪睨み」、後半は「テレビ変遷史」として独立して高座に掛かることが多い。私は寄席でしか聞いたことがなかったので、このNHK用自主規制版はかえって興味深い。鞍馬天狗の話で「丸顔に覆面は似合わない。小さん師匠が覆面したら爆笑の渦」、「言うことは人道的でローマ法王みたい、やってることは川俣軍司」、「(鞍馬天狗の)馬を先にやっつけて桜鍋にしちゃって」とか、妹が殺された次のシーンで突然歌い出す高田浩吉を「精神分裂だね」とか、昔は金持ちの象徴だったテレビも今なら「ウチはテレビジョン買って家中で毎日観てるぞ」「お前ン家、生活保護か」などの笑いを取れるくすぐりが規制(編集?)されている。
「ジャズ息子」
一九九五年放送。私が最初に手に入れた川柳師の映像で、今でもVHSのカセットを大事にしている。こちらもNHK用に気を遣ってはいるが、時間たっぷりで丁寧に演じており、テンションも高い。あらためて聴き直してみても、ジャズ息子の代表盤として差し支えないだろう。先日の独演会などはテンションの高さと客席の沸き具合はよかったが、つっかえる部分も多く、繰り返し聞くには厳しいかもしれない。
不満は二点。一つは出囃子が完全にカットされている点。どうでもいいようだが、やはり雰囲気が出ない。もう一つは、放送枠の三〇分に納めるために、部分的にカットされたままになっていること。放送では仕方ないが、CD化する場合は出囃子付き、無編集に戻して欲しいと思う。もしかしたらNHKには編集前のテープは残っていないのだろうか。
あと、演目的には「ガーコン」と「ジャズ息子」が良かったと思うのだが、プライヴェート盤(池袋秘密倶楽部)でほぼベストの「大ガーコン」が出ているので仕方ないか。ワザオギあたりが他の演目をCD化してくれないものだろうか。
と、不満もあるものの、川柳師の代表盤と呼べるCDが出たわけでメデタい。
このシリーズでは、川柳「ジャズ息子」の他にも、寄席やラジオでお馴染みの演目が多数発売になった。米丸「相合傘」、圓歌「浪曲社長」、圓蔵「猫と金魚」、扇橋「茄子娘」、権太楼「代書屋」、柳昇「雑俳」など、私の好きな演目がずらっと並んだのは壮観。
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