コバケン/三度目の「第九」
ベートーヴェン:交響曲第九番ニ短調作品一二五「合唱」(エクストン)
ソプラノ:菅英三子 アルト:秋葉京子 テノール:錦織健 バリトン:青戸知
合唱:東京芸術大学声楽科学生(有志) 合唱指揮:三河正典
管絃楽:日本フィルハーモニー交響楽団 指揮:小林研一郎
二〇〇五年十二月二十二、二十五日 東京芸術劇場ライヴ
コバケンの第九も三枚目だ。私は基本的にはコバケン・ファンであるので、同曲違演が次々CD化されるのは嬉しいが、マニア向けの感は禁じ得ない。まあ、マニアックなレコード会社がやっていることだから心配することもないのだろうが・・・。
中身はというと、三楽章までが素晴らしい。近年マンネリだ、手抜きだと揶揄されることの多いコバケン/日フィルだが、この第九に関しては長年の信頼関係がプラスに働いている。昨今流行の原典版とか何タラ版なぞには洟もひっかけず、慣用版の楽譜に十九世紀的編曲を加えるアプローチは今日ではかえって貴重だし、学術的な根拠(言い訳?)を求めない分、素直に充実した音楽になっている。ベーレンライター版の演奏をスコアを見ながら聴くのも面白いとは思うが、生で聴くなら理屈ではなくこのような感動的な演奏を聴きたい。
残念ながら第四楽章は辟易とする出来。元々切り貼り的で統一感がない音楽だと思っているが、表情を必要以上に付けすぎてゲップが出そうだ。更に男声ソリストが不満。青戸知は表情がわざとらしく、錦織健は単に下手。合唱もレヴェルが高いのがかえって表情過多になってしまう。これは指揮者の責任だろう。そもそもこの楽章は、深みを求める音楽ではなく祭りであると思うので、どんなに感情移入しても流れが悪いと駄演になってしまう。フルトヴェングラーだって深刻なのは歓喜の主題が現れるまでで、後は勢いで流して、コーダで目くらましという離れ業で切り抜けている。
オクタヴィアの録音は相変わらずオーケストラの真ん中に立っているような音。サントリーホールで録音した他のCDよりは幾らかマシだが、近年の江崎録音の範疇を越えない耳元録音。
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