« ただ反省 | トップページ | 池波正太郎「鬼平犯科帳」(文春文庫) »

2006年6月 7日 (水)

大野芳「近衛秀麿 日本のオーケストラをつくった男」(講談社)

 このタイトルを見て、税込み一九九五円のお金と引き替えにこの本を手にした人がみな、「どうして今までこの人のまともな評伝が出版されていないのか」という疑問を持っていたに違いない。岩城宏之の本などで近衛管弦楽団時代の逸話などは多少知っていたが、戦前のエピソードなどは初めて知ることばかりだ。
 日本のオーケストラ草創期に、名誉欲金銭欲全開で山師的な山田耕筰と、金や身分はそれ以上必要が無い道楽王的な近衛秀麿という正反対な個性が存在したことが面白い。サイドストーリーの艶聞も愉快で、澤蘭子が生きている内には出版できなかったのだろうと邪推してしまう。
 とにかく、在京オケのうち、N響、東響、日フィル、読響、都響という五つの団体(半分以上!)の創設に多かれ少なかれ関係があった大指揮者の、初の評伝ということでとても面白く読んだ。
 この本が出版されたことによって、遺された録音を聴くにも、録音年代と当時の近衛が置かれていた状況を俯瞰することが出来る。もし可能ならば入手しそこなった新響を振ったマーラーの交響曲第四番が、これをきっかけに再発されないものだろうか。

|

« ただ反省 | トップページ | 池波正太郎「鬼平犯科帳」(文春文庫) »