「犬神家の一族」(一九七六角川春樹事務所)
レンタルDVDで鑑賞。子供の頃にテレビで観た記憶はあるが、佐清がゴムの面を捲る場面しか覚えていないので、ほぼ初見と言って差し支えないだろう。
長い原作を二時間半弱の映画に仕立てる為には仕方がないのだろうが、導入部に比べて佐武殺し以降が駆け足になってしまい、最後の謎解き部分でどれがどれだか判らなくなってしまう。原作を読んでいてもそうなのだから、いきなり映画を観たら犯人は誰だか判るけど、その手順や同意なき共犯者たちの行動はわけがわからないかも知れない。
よくぞこれだけと思うほど当時の名優を揃えた配役も素晴らしい。当たり役となった石坂浩二の金田一は原作通り飄々とした風情が好ましい。松子が自害したときの「しまった」という大げさな演技が、原作の行間に込められた「気づいていたけど気づかないふりをしていた」という心境を巧みに演じている。
佐智の遺体の晒されている場所や、佐清の逃走場面、更に謎解きの場面などが原作とは大幅に改変されているが、映画だから仕方がないのだろう。印象的な湖面から逆立ちした遺体の両足が突き立っている場面も、原作通り薄氷の張った湖面の方が説得力があるが、設定を冬にすると風景の場面が映えない。新緑と湖の対比を描きたいが故に、さざ波立つ湖面から遺体の足が突き立っているという無理な映像をやむなしとしたのだろうか。映像にする難しさを改めて感じる。
批判はあるものの映画としては良くできた作品だと思う。さて、三十年後にリメイクされた方はどのような出来だろうか。
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