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2006年12月24日 (日)

横溝正史「犬神家の一族」(角川文庫一九七二)

 初出は「キング」一九五〇年一月~五一年九月。
 中学生の時に古本屋で買った改版前の文庫で、「横溝正史文庫1000万部突破記念 今秋10月大ロードショウ! 東宝映画化市川昆監督」と誇らしげなオビの付いた一九七六年の第三十九版。

 本編の最後に鉛筆で「December 19th, 1985」書き込まれている。角川文庫版の横溝作品は全巻読破したが、読み返しているのは数編しかないので、本作もおそらく二十一年ぶりの再読。
 舞台となっている長野県の諏訪周辺の地理に詳しくなった分読みやすい。作中の地名那須、雪ヶ峰を諏訪、霧ヶ峰に、更に犬神家を片倉家に読み替えると面白味が増す。
 作家横溝正史を語るほど読み込んではいないのだが、戦前の耽美的な中短編群、戦後十年間ほどの作品群、晩年の数編の長編が横溝のピークであると感じる。中でも戦後の絶頂期の真ん中に位置する本編は、何と言っても文章に勢いがあり読み始めるとグングン引き込まれてしまう。本格推理小説を至上とするならば、無理のある殺害方法や、読者が気づくことを金田一耕助が気づかない間抜けさなどは気になるかもしれない。しかし、物語の面白さと文章の勢いに引っ張られて、些細なことは気にせず読んでしまう。同じ横溝作品でも、昭和三十年代頃になると文章が停滞してきて、これらの欠点が気になるようになるのである。

 市川昆によるリメイク版映画の評判が甚だ芳しくない様子なので、正月にすることもないので観に行こうかと目論んでいるのである。公正を期す(?)ためにまず原作を読み直し、一九七六年のオリジナル映画を見直してから行きたいのだ。もっとも、オリジナルのDVDは地元のレンタルビデオ屋で貸出中のままだし、気が変わって正月に出かけるかも知れないのだけど。

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