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2007年1月 2日 (火)

「犬神家の一族」(二〇〇六「犬神家の一族」製作委員会)

(ネタバレ注意)

二〇〇七年一月二日 立川シネマシティ

 原作(文庫)、旧作(DVD)に続きリメイク版新作をスクリーンで観る。細かい部分で若干の変更はあるが、ほぼ旧作通りの内容。ということは何の為にリメイクしたのか?。旧作同様豪華な配役だ。石坂浩二の金田一耕助はそれほどではないが、加藤武の署長はヨボヨボしており、呂律も回らず痛々しい。大滝秀治の神主は更にヨレヨレだが、役柄的に違和感がなく得をしている。
 違和感があったのは、珠代がさらわれるモーターボートが、どう考えても昭和二十二年の時代設定では無理がある、ヤマハのFRP製みたいな船体だったこと。逆に旧作では違和感のあった、何十年も肌身離さず持ち歩いていたようにボロボロだった佐清の「わが告白」が、書いたばかりの新しい紙と封筒になっていた。
 旧作のラストシーンは、見送りに照れた金田一がみんなを出し抜いて、一本前の列車に飛び乗るという印象的な演出だった。新作では田圃の中のアスファルト舗装の道を金田一が歩いていく。そして振り返って意味のわからない表情をする。旧作のままの方が良かったのではないかと思うのだが。
 松嶋菜々子の起用は批判も多いようだが、まあ悪くはなかったのではないか。それより旧作では坂口良子の絶妙の演技で存在感のあった旅館の女中役が、深田恭子の大根役者ぶりで台無しになったように感じる。
 まあ、予想通りというよりは、予想以上に旧作と同じである。つまり、老監督が自分が若い頃と変わらないことを誇示したいだけの作品のように感じる。そういう発想をすること自体がすでに耄碌なわけである。高齢化社会の励ましになる映画なのかも知れないが、わざわざ映画館で観るまでもないだろう。DVD化されたら、旧作新作を同時に借りて細かく観比べるのが面白いかも知れない。

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