日本フィル第五八七回定期演奏会
二〇〇七年一月二十五日(木)、二十六日(金)サントリーホール
指揮/小林研一郎
マーラー/交響曲第九番ニ長調
高校生の時から二十年待ち続けたコバケンのマラ九。二日間の二日とも聴く。
曲に思い入れが強すぎ、理想の演奏が頭の中で出来上がっている。初日の第一楽章冒頭で肩すかしをくらった気分になる。ヴィオラの六連符は一音目を長めに手探りのように、第一主題のアウフタクトはフェルマータ気味に溜息のようにやってほしい。サラサラっと始まった第一楽章は抑え気味で迫力不足。この曲は第一楽章が肝心なのにここを抑えてどうする。第二楽章はグロテスクさが出て佳。第三楽章は最後の加速が上滑り気味でオケが鳴り切っていない。最後に大太鼓を加えるのはコバケンの常套手段。終楽章は好演。遅めのテンポで十分に唄わせていた。最後の音が消えてからの長い静寂は、日本フィルの客筋の良さを感じる。
残念だったのは、金管にミスが多く安定感を欠いたこと。終楽章の絃が非力で、決め所が決まらなかったこと。そして何と言っても「尋常でない世界」が現れなかったこと。
説明しづらいのだが、マーラーの九番というのは尋常でない世界が現れやすい曲で、バーンスタイン/イスラエル・フィルは最初の一音から最後まで尋常でない世界だったし、山田一雄/新日本フィルは何度か舞台の上に宇宙が現れた。今回のコバケンは良く考えた真摯な演奏ではあったが、心がざわめいたり、鳥肌が立つようなことが殆ど無かった。
コバケンが日本フィル音楽監督をを退任する。私が日本フィルの会員になったのが常任指揮者就任の九〇年、以来ずっと聞き続けたコンビだが、近年は馴れ合いの演奏が多くなっていたので、退任は仕方ないと思う。それよりも打楽器奏者の森茂が退団というのが大ショック。日本フィルを聴く楽しみの半分は森茂のティンパニだったのに。
そうでなくても演奏会通いの頻度が落ちているのに、森茂とコバケンのいない日本フィルは殆ど聴きに行くことは無くなりそうだ。
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