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2008年3月15日 (土)

さよなら一八三系

 三月十五日はJRグループのダイヤ改正が行われる。一般の人にとっては東海道新幹線がより便利になる程度の変化しかないのだろうが、「鉄」にとっては馴染みの列車が消えていく悲しいダイヤ改正である。
 一番の話題は急行「銀河」の廃止だろう。同時に特急「なは」も廃止されるが、こちらは既に運転区間も短縮されていたので寝台特急縮小の流れの中で当然という感じだ。しかし、「銀河」だけは東京~大阪間の新幹線を補完するダイヤなので廃止はないだろうと思っていた。ニュースでも取り上げられて、三月十四日の東京駅のホームには二千人もの「鉄」が集まったらしい。
 同じ日に私は別の列車に乗るために東京駅に向かった。21時30分発の「中央ライナー九号」である。なぜこの列車に乗りたかったかというと、あまり話題になってはいないが中央線で最後の一八三系電車の定期運用となるからだ。一八三系電車とは国鉄時代に製造された特急用車両で、国鉄末期からJR初期にかけての特急の顔であった電車である。
 中央本線の特急「あずさ」への投入は一九七三年で、当時「チビ鉄」だった私は、ボンネット型の一八一系電車を「高鼻」、平たい顔の一八三系を「低鼻」と命名していた。ちなみに、狩人が「あずさ二号」を歌って大ヒットしたのが一九七七年なので、「あずさ二号=一八三系」なのである。
 その後車内の床を高くして、座席を高級化する改造や、塗色の変更があったりした。さらに長野新幹線開業のために特急「あさま」用の一八九系が一時混ざったりしつつ、二〇〇一年のダイヤ改正まで特急「あずさ」「かいじ」として走り続けた。
 特急運用が終わった後は、臨時列車の他に通勤ライナーとして運用され、ここ数年は塗色を国鉄時代のデザインに戻していた。いわば繁忙期にOBが定期的に助っ人に来るような運用だったのだが、このダイヤ改正で通勤ライナーからの運用も解かれ、完全な隠居の身になるのだ。

 午前中からネット予約で指定席を確保し東京駅に向かうと、中央線ホームは普通の金曜日の雑踏で、「鉄」の姿はない。私も勤め帰りの風体だから同化している。混雑で五分ほど遅れて発車すると、車内は全く日常の風景だ。新宿駅に「三脚組」が何人か見えたが、それ以外は全くいつも通り。立川駅でホームに降りて、感慨に浸っているのは私だけだったようだ。物好きなことである。

 古いものが消えていくのは淋しいが仕方のないことだ。しかし、全てを合理的思考で切り捨てることに一抹の不安を覚えるのは、すっかり自分が古い人間の範疇に収まっている自覚なのかも知れない。

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