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2008年5月22日 (木)

ぬか床の愉悦

 地元で行きつけの飲み屋に行くと、必ずお新香を頼む。この店のぬか漬けが滅法旨いのである。そして、良心的なことに「今日は余り漬かってないよ」とか、「浅いのと深いのと二種類あるけどどっちがいい」などと、漬かり具合を教えてくれるのだ。私はよく漬かっている方が好きで、このきゅうりのぬか漬けを家でも食べたいと思ったのが事の始まりだった。
 四角い大きめのタッパーにぬか床を作って始めて見たのだが、一週間ほど経ってもただの塩漬けとしか思えない代物しか出来ない。そもそもぬか味噌の独特な匂いがしないのである。
 仕方ないので、きっかけになった飲み屋で、ご主人に事情を話していると、横から女将さんが口を挟む。
「よかったらうちのぬか床を分けてあげましょうか。うちだって四十年前にこの店を始めたとき、私の実家から送ってもらったんだから。」
 まことに有り難い申し出、というより床分けしてもらいたくて相談したというのが本音なので、喜んでぬか床を分けてもらい、我がぬか床に混ぜてみた。
 翌朝は別段変化がないまま掻き回し、夜帰宅してみて驚いた。ぬか床全体の嵩が一二割増えて、ぬか床全体が膨らんだ感じになっていたのだ。遂に乳酸菌だか酵母だかが発酵を始めたらしい。一旦始まればしめたもので、以来快調に我がぬか床はぬか漬けを生産し続け、私は朝晩ぬか漬け三昧の高塩分&手肌すべすべ生活を満喫している。
 勿論、床分けしてくれた飲み屋にも、その後の経過を報告している。しかし、元は同じはずなのに、まだ我がぬか床では、その飲み屋の「微妙な酸味とさっぱりした味わい」には遠く及ばない。まだまだぬか漬けの道は遠いようだ。

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