宮脇俊三と鉄道紀行展
世田谷文学館企画展 二〇〇八年七月十二日~九月十五日
宮脇俊三さんが亡くなって、早いもので五年経つ。私が二〇〇二年に旧国鉄線完乗を達成したのも、宮脇さんの本を読んだことから始まった。今現在でも世間一般では「鉄道ファン=尋常でない集団」という認識をされていると思う。私は元々鉄の素質は持っていたのだが、鉄道マニアの傍若無人な行動が嫌いで、鉄道ファンにならずにいた気がする。ところが、遅まきながら宮脇さんの文章を読んで、こんな楽しみ方もあったのかと目から鱗が落ちる思いをし、以来「乗り鉄」となった。時期的には一九九八年から二〇〇二年までの五年間が、私が本気で乗り鉄をしていた時期であった。
世田谷文学館には初めて行ったが、会期末の日曜日で盛況だった。読者にとってはお馴染みの「二万キロ白地図」や、「最長片道切符」の実物を見られることが目玉であり、実際に目の当たりにすると言葉に出来ない感慨が込み上げる。同じ思いのファンも多かった事だろう。
それにしても、作家をテーマにした企画展というのは、初刊本、自筆原稿、書簡類という大して面白くもないものを陳列する内容となる。私のような宮脇さんが好きで好きでたまらない人間にとっては、どれも感慨深い資料だが、興味のない人にとってはガラクタの陳列としか思えないだろう。どれほど入場者があったのかは判らないが、このような地味な企画展を企画してくれた世田谷文学館に感謝したい。
宮脇さんの娘の宮脇灯子さんが、父親の足跡を追った著作を立て続けに出している。宮脇ファンとしては嬉しいのだが、あまりその路線で稼いじゃうと、一生「宮脇俊三の娘」という肩書きが取れなくなっちゃうよと、他人事ながら心配している。
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