三度目
土曜日に釣りに行こうと思い、早朝の南武線に乗車。もうすぐ川崎に着くなと思う頃、非常ブレーキで停車。車内放送が「この列車が平間駅に進入の際、人身事故が発生しました。乗務員が確認のため電車から離れますので、絶対に電車から降りないでください」と告げる。
中央線で二十年近く通勤・通学しているので、人身事故で予定が狂うことは日常茶飯だが、乗っている電車が人身事故を起こしたのは三回目だ。余裕を持って家を出たのに、釣り船の出船時刻に間に合わなくなりそうだ。幸い先頭車がホームにかかっているので、平間駅で降りることは可能らしい。川崎駅まで歩いて間に合うか微妙なので、まずは携帯電話のナビ機能で川崎駅までの距離を調べようと思いつく。GPS信号の受信状態を良くするために窓を開けて車外に顔を出したら…。見てしまいました。一両ほど先の線路脇に倒れている人を。
目撃者が乗務員や野次馬と声高に話しているので、状況は大体判る。飛び込み自殺ではなく、踏切の直前横断。三十センチほど間に合わず跳ねられたらしい。轢断ではないので、普通に線路脇に横たわっている感じだ。脱げたスニーカーと持っていたらしいバッグが散らばっているのが生々しい。
死体を見た瞬間から「歩いて川崎駅まで行けば釣り船に間に合うかも」などという了見は消し飛び、目が離せなくなってしまった。救急隊、警察の到着から現場検証、運転再開までずっと見守り、色々考えてしまった。事故の状況だけで考えれば、危険を承知で渡ろうとした本人の問題だ。しかし朝六時に遮断機の下りた踏切を無理に渡らざるを得ないほど急ぐ事情を抱えていたのか。それとも朝まで飲んでいて訳がわからなくなっていたのか。ともかくも、すぐ目の前に、たった今不用意に死んでしまった人が横たわっていた。
私は「鉄」なので、日頃から「鉄道自殺は犯罪。轢断死体は見せしめに放置して、カラスや野良猫に食わせちまえ」などと言っているが、事故の場合は死んだ人も鉄道会社も気の毒としか言いようがない。踏切事故を減らすための高架化推進は、鉄道会社の責任ではなく公共交通機関全体、つまり国の方針として進めて欲しいものだ。
勿論、釣りに行く気は失せて(時間も間に合わなかったが)、そのまま家へ帰って一日中ぼーっとしていた。気分転換に飲みに行こうと思ったら、行きつけの飲み屋は臨時休業だった。
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