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2008年11月22日 (土)

「帝国オーケストラ」(EIKON Media 二〇〇七)

原題「The “Reichsorchester” The Berlin Philharmonic and the Third Reich」
ユーロスペース2(渋谷)レイトショー

 ベルリン・フィルハーモニー管絃楽団(以下BPO)創立一二五周年記念作品。ナチス政権下でのBPOをユダヤ人楽員やナチス党員楽員の事を中心に、証言で綴るドキュメンタリー映画。戦時中のBPOのことには以前から興味があったので、残業後に鑑賞。
 結論から書く。期待外れ。しかし、それは制作者の姿勢や技術が問題なのではない。言い換えれば、時機を逸した。
 このテーマでドキュメント映画を作るなら、ナチス台頭以前のヴァイマール時代の事も前提として欲しいところだ。しかし、一九三三年以前から団員だった人の証言は一人だけ(この人がメインなのだが)。終戦までに団員だった人が一人。後は息子や娘の二次証言ばかりだ。一九八二年の創立百周年の時ならば、もっと生々しい証言を得られただろう。そうなれば、同じ事件に対して複数の証言が得られ、ドキュメントとしてより深みが出たと思う。カラヤンが存命中にナチスとの関わりを調べるのはタブーだったかも知れないが、この映画でカラヤンのことは、一九五五年のアメリカ楽旅でしか名前が出ないので、問題なかったと思う。
 それ以外では、フルトヴェングラー亡命から復帰までの三年間を、もう少し詳しく取り上げて欲しかった。一九四四年の演奏旅行の話など、それだけで一本の映画が出来るような事だし、ヘーガー、ボルヒャルト、チェリビダッゲの事なども面白いと思う(ヘーガー以外は「帝国オーケストラ」ではないが)。

 当時の映像も既出のものばかりで、細切れにしか映されない。フルトヴェングラーが一番多く映るが、個人的には初めて見るブルーノ・キッテルの指揮姿が印象に残った。

 色々なことを知りすぎたのだろうか。古楽員の証言に感慨を持つが、「特権階級だったんでしょ」という気もする。観終わって淡々と帰路につきながら、中学生の時に銀座のヤマハホールで「フルトヴェングラーその生涯の秘密」を観た時は、一緒に行った村上君と、今すぐ感想を語り合いたい気持ちになったことを思い出した。

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