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2008年12月19日 (金)

シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ

指揮/グスターボ・ドゥダメル
ピアノ/マルタ・アルゲリッチ ヴァイオリン/ルノー・カプソン チェロ/ゴーティエ・カプソン

ベートーヴェン/三重協奏曲ハ長調作品五十六
マーラー/交響曲第一番ニ長調「巨人」

二〇〇八年十二月十八日 東京国際フォーラムホールA
主催/日本・ベネズエラ音楽交流支援委員会

 初来日の青少年オーケストラ。前日(十七日)の公演を聴いた友達のS女史から会社にメールがあり「とにかく聴いて見よ」との内容。年末進行の仕事を放棄して会場に向かう。

 前半の三重協奏曲は普通の編成。ユースオケにしては技術はしっかりしているし、フレーズの歌い方なども堂に入っている。ピアノトリオはアルゲリッチが主導権を握っているのだろうが、とにかく音量が不足で伝わってこない。もどかしいので前半は諦めて寝ることにする。生アルゲリッチを子守歌にして寝るとは贅沢の極み。

 休憩後の舞台上はもの凄い事になっている。第一ヴァイオリンが八プルトで折り返して三十人近くいる。管も全て倍または三倍になっており、全体で(数えてないが)二百人を越えそうな大オーケストラだ。マーラーの一楽章序奏は、曲が曲だけに大編成が裏目に出て雑な印象。提示部以降はユースオケらしく、きびきびした好演。第二楽章は冒頭の低絃をフォルティシモでゴリゴリ弾かせたり、見得を切るようなルフトパウゼなど、面白さ満載である。大編成向きではない第三楽章はやや苦しい。行進曲部分の大太鼓を硬いばちで叩かせるなど新機軸もあった。終楽章はともかく音の洪水。コンチェルトは精鋭部隊だったので、技術は高くても音量不足だったが、こちらは総力戦。下手も混じっているけど迫力は満点。コーダの盛り上がりも圧倒的で、客席は沸きに沸いた。

 長いカーテンコールの後、ヴェネズエラ国旗柄(?)のジャンパーに着替えて、アンコールはバーンスタインのウェストサイド・ストーリーから「マンボ」。興奮した観客(関係者)が一緒に「マンボ!」と叫ぶ。最後に国旗柄ジャンパーを客席に投げるというプレゼントつきで、大盛り上がりの二時間半だった。

 オーケストラ自体は荒削りな部分はあるものの、テンションの高さと、若者らしい食いつきの良さで大熱演。そして、才能ある若い指揮者の気取らずやりたいことをやってみる音楽作りがうまくマッチして、学園祭の最終日のような熱狂的な演奏となったのであろう。ただし、大編成の音量の大きさに目を眩まされてる部分は否めないし、人数を増やして音量を稼ぐことが出来ない打楽器群が、決め所で決まらないというバランスの問題も大きい。
 さらに、これはマネージメントの問題であるが、五千人収容のイベントホールで催すのは何が目的なのかを問いたい。見回した感じ集客は六割程度。その半分は招待客と思われた。優秀なユースオケの音楽を聴かせたいのなら、普通のコンサートホールでやればいい。若者のお祭りをやりたいならアルゲリッチが出る必要はない。舞台上の音が空中に散って返ってこない感じが、かつて普門館でカラヤン/ベルリン・フィルを聴いたときの感じが蘇った。収容人数を稼ぎたいなら容積はさほどでないNHKホールの方がずっとマシだと思うのだが。
 前日の会場は東京芸術劇場で、アルゲリッチ無しのプログラムだったようだが、大編成向きの芸劇ではさぞかし盛り上がっただろうと想像する。国際フォーラムでは、何をやっているのかよく判らないのに、それほど音圧がないという最悪の状態だった。国際フォーラムが悪いのではない、国際フォーラムを使うマネージャーが悪いのだ。

 オーケストラと指揮者のどちらも素晴らしく、感動的な演奏会だっただけに、前日の芸劇で聴かなかったことが悔やまれる。次回来日するときは、是非良心的なマネージャーがついて、普通のホールで、普通の値段で聴きたいものだ。海外とはいえ、アマチュアオケで一万円以上のチケットとは尋常でない。チケットの値段を上げるためにアルゲリッチと抱き合わせにしたのかと勘ぐりたくなる。

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