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2009年2月 7日 (土)

両国寄席

「時蕎麦」 三遊亭京楽
「抜け雀」 三遊亭鳳楽
   ー中入りー
「真田小僧」三遊亭真楽
(奇 術) 花島 久美
「片 棒」 三遊亭楽生

二〇〇九年二月六日 お江戸両国亭

 一月に勤務先が目黒から両国に移転し、現在本所界隈を探索中だ。毎月一日~十五日開催の両国寄席に行ってみた。どうせガラガラだろうと思って入ったのだが、意外にもほぼ満席の盛況だ。

 京楽の途中から入った。真似して失敗する愚か者を影から見ていたことにせず、一文掠めた男の弟分にするという工夫は素晴らしい。話の筋が自然になり、くすぐりも増える。しかしながら、芸がクサ過ぎる。愚か者を派手に演じれば演じるほど、オバサン連中は笑うが、私は恥ずかしくなって正視できなくなってしまう。円楽一門のドサ回り無限地獄の弊害だろうか。
 鳳楽はまくらの内は良かったが、抜け雀に入ると危なっかしい。稽古してないらしく、噺の筋を思い出しながら喋っているのが見え見えで、所々抜かしたりする。師円楽の一番悪い所、うろ覚えで高座にかける癖をそのまま引き継いでいる。円楽一門の古株の中では唯一まともな噺家だと思って久しぶりに聴いたのだが、正直がっかりだ。そういえば師円楽もまともな噺家だったのは四十代までで、歳をとってからは酷いものだった。総領弟子だからってそんなところを真似なくていいのに。出囃子は初めて生で聴く「正札付」。七代目円生を継ぐの継がないのと言われている鳳楽だが、それをきっかけに化けるならば襲名ブームに乗るのも悪くないかもしれない。
 食いつきは真楽。噺はうまいのだが口跡が悪い。公民館の拡声装置のように声がこもって聞こえるのだ。発音が悪いわけではないので損をしている。短めに、女房が帰ってきた所まで。
 膝は花島久美の奇術。出囃子は「赤いスイートピー」。下座さんが四苦八苦していて面白い。手品自体はありふれているが、明るい高座だ。売れない奇術師の屈折した感じが無く、なかなか楽しかった。
 トリは楽生。まだ若手で威勢がいい。声も通るしテンションが高く、出てきた途端に高座が明るくなる。噺家口調ではなく若者言葉のフリートークで一通り湧かして片棒に入る。ここで噺家口調に切り替わるが、勢いがあるので気にならない。ずっとハイテンションで、お囃子の真似の部分など、演者が一番楽しそうだ。

 全員初めて聴く噺家だったが、円楽一門にも逸材がいることを認識した。総帥円楽が引退したのだから、落語協会か芸術協会に戻ってもいいのではないか。寄席に出ることによって、実力を認められ客も付くだろう。今のままでは下手な好楽と楽太郎が看板になっており、一門の不幸だと思う。

 両国亭は普通のビルの一フロアを無理矢理寄席にしているが、アットホームで良い。下座が生なのも嬉しい。死語となった感のある、「端席」を感じられる心地よい空間だ。

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2009年2月 5日 (木)

コバケンのチャイ五

都民芸術フェスティバル オーケストラ・シリーズNo.40

二〇〇九年二月四日 東京芸術劇場

管絃楽/読売日本交響楽団
ヴァイオリン/藤川真弓
指揮/小林研一郎

グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品三十五
チャイコフスキー/交響曲第五番ホ短調作品六十四
ブラームス/ハンガリー舞曲第一番(アンコール)

 都フェスのオーケストラシリーズも四十年目。学生の頃には半分以上の公演を聴いていたが、近年は食指が動かずご無沙汰していた。今年は小林研一郎(以下コバケン)が読響でチャイ五をやるというので、久々に足を運んでみた。

 グリンカは軽い腕慣らし。特に変わったことはないが、オケよく鳴る快演。コンチェルトでは、絃を十二型に減らす。藤川真弓のソロは、とにかく音量がない。何度か聴いているはずなのに、印象の薄いヴァイオリニストだ。ソロの部分はいいのだが、オケとの掛け合いになると、オケが手加減している感じで迫ってこない。技術的にもややもたつき気味の部分が散見された。

 チャイ五は素晴らしかった。この四半世紀でコバケンのチャイ五を何回聴いたか数え切れない。コバケン十八番中の十八番で、曲が完全に自分の物となっている。緩急自在なテンポと濃厚な表情付けは、まさにチャイコフスキーの本質を突いていると思う。何度も聴いていて、次にどうなるかは知っているのに、聴く度にドキドキしてしまう。尋常でない速いテンポから急激なテンポの変化、咽ぶように歌わせる旋律、大見得を切るようなルバート。どこをとっても手慣れているのにスリリング。世界中でこれ以上のチャイ五を振れる指揮者はいないだろう。時にやりすぎとか、コバケン演歌でチャイコフスキーではないというような批判も目にするが、私は誰が何と言おうとコバケンのチャイ五が大好きだし、間違いなく世界一のチャイ五だと思っている。
 コバケンの解釈も、八十二年に新星日響を振ったレコード以来、細部に変化はあるものの、基本線は変わっていない。振るオケによって食いつきに差が出るが、読響は技術水準、食いつき度ともに高く、聞き慣れた日本フィルに比べて新鮮味があり好演。絃の水準の高さは素晴らしかった。

 アンコールはハンガリー舞曲第一番。存分に遊んだ演奏で、オケも楽しそうに弾いていた。

 最前列の中央(指揮者の目の前)で一人で立ち上がって拍手している人がいたが、それほどではないと思う。かつてコバケン/神奈川フィルで同じチャイ五を聴いたとき、演奏が終わった瞬間に無意識に立ち上がってしまった事がある。本当に凄い演奏に立ち会うと、身体が反応してしまうものなのだ。指揮者が袖に引っ込んだときに我に返って周りを見渡したら、同じく立ち上がっている御同輩が十人くらいいた。勿論恥ずかしくなってすぐに席に着いた。

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