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2009年2月 5日 (木)

コバケンのチャイ五

都民芸術フェスティバル オーケストラ・シリーズNo.40

二〇〇九年二月四日 東京芸術劇場

管絃楽/読売日本交響楽団
ヴァイオリン/藤川真弓
指揮/小林研一郎

グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品三十五
チャイコフスキー/交響曲第五番ホ短調作品六十四
ブラームス/ハンガリー舞曲第一番(アンコール)

 都フェスのオーケストラシリーズも四十年目。学生の頃には半分以上の公演を聴いていたが、近年は食指が動かずご無沙汰していた。今年は小林研一郎(以下コバケン)が読響でチャイ五をやるというので、久々に足を運んでみた。

 グリンカは軽い腕慣らし。特に変わったことはないが、オケよく鳴る快演。コンチェルトでは、絃を十二型に減らす。藤川真弓のソロは、とにかく音量がない。何度か聴いているはずなのに、印象の薄いヴァイオリニストだ。ソロの部分はいいのだが、オケとの掛け合いになると、オケが手加減している感じで迫ってこない。技術的にもややもたつき気味の部分が散見された。

 チャイ五は素晴らしかった。この四半世紀でコバケンのチャイ五を何回聴いたか数え切れない。コバケン十八番中の十八番で、曲が完全に自分の物となっている。緩急自在なテンポと濃厚な表情付けは、まさにチャイコフスキーの本質を突いていると思う。何度も聴いていて、次にどうなるかは知っているのに、聴く度にドキドキしてしまう。尋常でない速いテンポから急激なテンポの変化、咽ぶように歌わせる旋律、大見得を切るようなルバート。どこをとっても手慣れているのにスリリング。世界中でこれ以上のチャイ五を振れる指揮者はいないだろう。時にやりすぎとか、コバケン演歌でチャイコフスキーではないというような批判も目にするが、私は誰が何と言おうとコバケンのチャイ五が大好きだし、間違いなく世界一のチャイ五だと思っている。
 コバケンの解釈も、八十二年に新星日響を振ったレコード以来、細部に変化はあるものの、基本線は変わっていない。振るオケによって食いつきに差が出るが、読響は技術水準、食いつき度ともに高く、聞き慣れた日本フィルに比べて新鮮味があり好演。絃の水準の高さは素晴らしかった。

 アンコールはハンガリー舞曲第一番。存分に遊んだ演奏で、オケも楽しそうに弾いていた。

 最前列の中央(指揮者の目の前)で一人で立ち上がって拍手している人がいたが、それほどではないと思う。かつてコバケン/神奈川フィルで同じチャイ五を聴いたとき、演奏が終わった瞬間に無意識に立ち上がってしまった事がある。本当に凄い演奏に立ち会うと、身体が反応してしまうものなのだ。指揮者が袖に引っ込んだときに我に返って周りを見渡したら、同じく立ち上がっている御同輩が十人くらいいた。勿論恥ずかしくなってすぐに席に着いた。

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