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2009年4月15日 (水)

復活のティンパニ

 先月聴きに行った「西本智実マーラーと向き合う」の「復活」を聴いた後、仲良しのE女史と飲みながら面白い話を聞いた。「復活」のスコアに音が変なところがあるというのだ。話を聞く内に確かにCDなどで違和感を感じたことがあることを思い出した。
 問題の箇所は第五楽章のティンパニ。舞台裏の別働隊が行進する直前の「Wieder zurückhaltend」の部分(練習番号21)。トロンボーンの「ド♭~シ♭、ド♭~シ♭」という呼びかけにティンパニが「シ♭、ファ」と応える。このティンパニの二音目の「ファ」がどうしても違和感があるのだ。これを「シ♭、ミ♭」に直すとしっくり来る。
 経緯は幾つか考えられる。まずスコアが正しく、マーラーがわざと違和感のある音を叩かせたという考え方。そうならば楽譜通り演奏する以外にない。次にスコアが間違っている場合。マーラーが書き間違えたケースと、写譜屋や出版社が間違ったケース。マーラーの自筆譜や、マーラーが実際に演奏に使ったスコアやパート譜を比較すれば、あっさり答えは出るのだろうと思うが、残念なことに全音版のポケットスコアしか所有していない身には解明のしようがない。でも面白いので、持っているCDを片っ端から聴いてみた。

「シ♭、ファ」のまま
・バーンスタイン/ニューヨークpo(63)
・小林研一郎/チェコpo(04)

「シ♭、ミ♭」に変更
・フリート/ベルリン国立歌劇場o(24)
・シェルヘン/ヴィーン国立歌劇場o(58)
・バーンスタイン/イスラエルpo(67L)
・バーンスタイン/ロンドンso(73L)
・バーンスタイン/ニューヨークpo(87L)
・小林研一郎/日本po(02)
・渡邉曉雄/日本po(78L)
・山田一雄/京都市so(80L)

 興味深いのはマーラーと交遊のあったフリートが修正している点であろう。バーンスタインは初録音ではスコア通り、イスラエルライヴ以降は修正。小林研一郎はチェコフィルでは楽譜通りだが、ノイマンが楽譜通りにやっていたのではないか。
 それにしても、マーラー好きを自認しながら、持っているCDの顔ぶれは貧弱だ。定番と言うべきヴァルターの新旧両盤、クレンペラー、メータ、復活博士のキャプランすら聴いたことがない。私の場合、CD購入の動機は曲よりも演奏者のことが多いので、コバケン、バーンスタインに偏らない聴き方をするべきなのだろう。

 この件に関しては、今後新しい発見があったらまた追記しようと思っています。

Mahlersym2521 (問題の箇所、↑の音が違和感がある)

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2009年4月12日 (日)

インバルの千人

マーラー/交響曲第八番変ホ長調「千人の交響曲」

独唱/澤畑恵美、大倉由紀枝、半田美和子(ソプラノ)
    竹本節子、手嶋眞佐子(アルト)、福井敬(テノール)
    河野克典(バリトン)、成田眞(バス)
合唱/晋友会合唱団(合唱指揮/清水敬一)
    NHK東京児童合唱団(合唱指揮/加藤洋朗)
管絃楽/東京都交響楽団
指揮/エリアフ・インバル

二〇〇八年四月二十九日 ミューザ川崎シンフォニーホール

エクストン/CVCL-〇〇三七九

 客席で聴いていた演奏会がCD化されるというのは嬉しいものだ。客席では大感動したのに録音で聴くと大したことないというのはよくあるケース。逆に、生ではそれほどに感じなかったのに、録音で聴いて感心するというのもまれにある。
 この「千人」は生で聴いてとてもいい演奏だった。しかし、CD化するには致命的なミスが一箇所あったので、そこをどう扱っているのかに興味があった。山田一雄の「藤沢の千人」のように、ミスも記録としてそのまま残すのか。
 その問題の箇所は、第一部始まってすぐの、八十四から八十七小節。テノールソロが「donum Dei altissimi, altissimi,」と唄う部分で、確か半小節か一小節ずれてしまった。幸い釣られたパートはなく、テノール一人が落っこちた印象だった。
 CDで聴いてみると予想通り、何事もなく唄っている。ゲネプロの音を繋いだのか、他会場での録音を繋いだのか。確か前日の東京文化会館では、主催者記録用の吊りマイクのみだった気がするし、翌日のサントリーホールはNHKの収録が入っていたので、マイクセッティングもNHKがやっていたはず。なので、前日、翌日の音を繋ぐのは難しいと思われる。しかし、三日連続公演の中日で、ゲネプロを通しでやるかは微妙な所だ。これは、当日エキストラで乗っていた友人に聞いてみようかと思う。

 演奏自体は大変素晴らしい。凝縮型の演奏は練れており、完成度が高い。本番の印象通り合唱と独唱女声陣のレヴェルも高い。そして、録音もいいので「千人」の新たな名盤と言えると思う。最近出たブーレーズ盤やゲルギエフ盤よりも私は好きだ。
 客席で聞いた時は、バンダと栄光の聖母が真後ろに来る席で、頭の後ろでラッパを吹かれる体験をしたが、SACDのマルチチャンネルで聴くと、どんな感じがするのだろうか。クラシック音楽の録音は基本的に通常のステレオ録音で十分だと思う。しかし、この「千人」や「ローマの松」などの客席バンダが入るような曲は、マルチチャンネルで聴いてみたら楽しいかも知れない。そのためにマルチチャンネル再生環境を整備する気は無いのだが。

 (追記)
 仲良しのE女史に尋ねたら、覚えている人に問い合わせてくれて、CD用にゲネプロも録音していたらしい。どうやら三日ともゲネプロはきっちり通して、本番六回だった模様。聞いただけでグッタリしそうな話です。恐るべきインバル爺。

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