復活のティンパニ
先月聴きに行った「西本智実マーラーと向き合う」の「復活」を聴いた後、仲良しのE女史と飲みながら面白い話を聞いた。「復活」のスコアに音が変なところがあるというのだ。話を聞く内に確かにCDなどで違和感を感じたことがあることを思い出した。
問題の箇所は第五楽章のティンパニ。舞台裏の別働隊が行進する直前の「Wieder zurückhaltend」の部分(練習番号21)。トロンボーンの「ド♭~シ♭、ド♭~シ♭」という呼びかけにティンパニが「シ♭、ファ」と応える。このティンパニの二音目の「ファ」がどうしても違和感があるのだ。これを「シ♭、ミ♭」に直すとしっくり来る。
経緯は幾つか考えられる。まずスコアが正しく、マーラーがわざと違和感のある音を叩かせたという考え方。そうならば楽譜通り演奏する以外にない。次にスコアが間違っている場合。マーラーが書き間違えたケースと、写譜屋や出版社が間違ったケース。マーラーの自筆譜や、マーラーが実際に演奏に使ったスコアやパート譜を比較すれば、あっさり答えは出るのだろうと思うが、残念なことに全音版のポケットスコアしか所有していない身には解明のしようがない。でも面白いので、持っているCDを片っ端から聴いてみた。
「シ♭、ファ」のまま
・バーンスタイン/ニューヨークpo(63)
・小林研一郎/チェコpo(04)
「シ♭、ミ♭」に変更
・フリート/ベルリン国立歌劇場o(24)
・シェルヘン/ヴィーン国立歌劇場o(58)
・バーンスタイン/イスラエルpo(67L)
・バーンスタイン/ロンドンso(73L)
・バーンスタイン/ニューヨークpo(87L)
・小林研一郎/日本po(02)
・渡邉曉雄/日本po(78L)
・山田一雄/京都市so(80L)
興味深いのはマーラーと交遊のあったフリートが修正している点であろう。バーンスタインは初録音ではスコア通り、イスラエルライヴ以降は修正。小林研一郎はチェコフィルでは楽譜通りだが、ノイマンが楽譜通りにやっていたのではないか。
それにしても、マーラー好きを自認しながら、持っているCDの顔ぶれは貧弱だ。定番と言うべきヴァルターの新旧両盤、クレンペラー、メータ、復活博士のキャプランすら聴いたことがない。私の場合、CD購入の動機は曲よりも演奏者のことが多いので、コバケン、バーンスタインに偏らない聴き方をするべきなのだろう。
この件に関しては、今後新しい発見があったらまた追記しようと思っています。
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