« 仏岩に登る | トップページ | ミューザ川崎開館5周年記念演奏会 »

2009年5月25日 (月)

頑張れ藤沢市

 神奈川県藤沢市が東海汽船のジェットフォイルをチャーターして、江ノ島~大島航路を復活させるらしい。このところ明るい話の無かった伊豆諸島航路では、久々の明るい話題である。

 江ノ島~大島航路と言えば、客船ファンにとってはまず「さくら丸」が思い浮かぶだろう。一九六四年の航路開設時に新造船で投入された客船である。三菱重工下関造船所で建造された一一三二総噸、全長六〇メートルの純客船で、小ぢんまりした船橋の下に広い遊歩甲板があり乗客が前方の展望を楽しめる、いかにも「遊覧船」という雰囲気の船だった。残念ながら航路自体が一九七四年に廃止されているので、私は江ノ島~大島航路に乗船したことはない。しかし、何かのイヴェントで晴海埠頭に来たときに乗った記憶がある(かなり曖昧)。その後「はまゆう丸」「かとれあ丸」「ふりいじあ丸」「さるびあ丸」と続く東海汽船の「走るレストラン路線」の嚆矢となり、昭和の離島ブームで活躍した懐かしい船だ。

 今回の航路復活では、さくら丸時代と同様に朝江ノ島発の日帰りダイヤで運行されるが、さくら丸時代に片道三時間近くかかっていた時間が、一時間に短縮される。これで九時発のゆったりした時間で、大島滞留時間が五時間以上確保出来る。観光客が島を巡っている間に、ジェットフォイルは東京まで往復してくることが出来て配船にも無駄がない。
 私の考えでは、伊東航路、稲取航路は復活の価値はないが、江ノ島航路には将来性があるような気がする。熱海航路がジリ貧なのを見ても判るように、「温泉に泊まって翌日は大島観光」というコースは時代遅れだと思う。寂れた観光地同士を繋いでも観光需要は喚起できない。ならば藤沢という人口が多くて大都市(横浜、川崎)に近い都市と島を結ぶ方がいい。
 そしてもう一つ考えがある。早朝の大島発江ノ島行きの便を設定するのだ。ジェットフォイルを大島に滞泊させるのは難しいとは思うが、岡田港を改造するか波浮港に避難させて(喫水のこととかは知りませんが)、大島発七時、江ノ島着八時、帰りは江ノ島発十六時半、大島着十七時半というダイヤにするのだ。これで島民が内地に所用がある場合に日帰りの便が良くなる。役場職員も都庁で10時からの会議に間に合うだろう。需要はあるはずだ。
 事情に詳しい方からは「それは東京客船の二の轍だ(*)」という批判をされるだろう。確かに東京客船が二〇〇二年に開設した久里浜~大島航路は、確か大島発六時が一便だったので、明らかに島民の東京日帰り需要を狙っていた。しかし、東京客船がコケたのは、用船の混乱と開業の延期、航路に不適合な船舶しか確保できなかったための、就航率の低さと地獄のような揺れが客離れを招いたと考えられる。就航以来七年が経ち、耐候性、乗り心地、速力ともに実績のあるジェットフォイルならば、東京客船の二の舞にはならないと思うのだが。

 藤沢市は今年度中に三回チャーター便を運航し、好調ならば東海汽船に航路を引き継ぐ意向だという。館山~大島~下田航路と同様の方向を狙っているようだ。私の考えでは館山や下田よりは需要があると思う。ただ、館山航路同様に、椿まつり期間だけの季節運行では定着しづらいと思う。せっかくだから通年運行にして欲しい所だが、そうなると繁忙期はジェットフォイル三隻では足らないだろう。
 株主総会を見ても、積極性ゼロの経営を続けている東海汽船だが、ここらでジェットフォイルをもう一隻購入して、久里浜、館山、江ノ島航路を通年運行にしてみたらどうだろう。乗り物は「毎日同じ時刻に運行している」ということが大切だと思う。

 今回の藤沢市の企画は本当に心から成功を祈りたい。幸いにも第一回の募集には参加者が殺到しているようだ。
 一回目(六月)は日程的に無理だけど、次回(十月)以降には参加してみたいと思っているのだが、パンフレットを見る限り片道乗船は出来なくて、往復乗船と観光が完全パッケージになっているようで、一人では参加しにくいのが難である。

 以上船ヲタの戯れ言でございました。

*東京客船の事はWikipediaに詳しく記述されています。

|

« 仏岩に登る | トップページ | ミューザ川崎開館5周年記念演奏会 »

コメント

こんにちは。
東海汽船がJFを調達するのはまず困難ではないかと思います。東海汽船にとって喫緊の課題は「かめりあ丸」の代替で、これが全く進んでいないからです。一時はマルエーフェリーの鹿児島航路にいた「フェリーあかつき」を買うとか言う話もありましたが、この船は他社が引き取っています。フェリーあかつきはどう見ても伊豆諸島航路には合わない船で、新造ではなくこんな船を用船する話が出てくること自体東海汽船の苦しい事情を物語っていると思います。

代替計画が進まない間にもかめりあ丸の老朽化が進んでおり、6月のサノヤスでのドックでも船底の錆が相当に酷かったとのレポートが上がっています。

藤沢市の意気込みは評価できるのですが、赤字ローカル鉄道の救済スキームとして近年よく使われる上下分離まで検討して欲しいところです。神奈川県と一緒に船を公有し、運航を東海汽船に任せる方式です。横須賀市や横浜市を巻き込んで久里浜や横浜発着便を追加するのも一つの手でしょうね。

投稿: 東海汽船ファン | 2009年7月 4日 (土) 21時24分

 東海汽船ファンさん、コメントありがとうございます。
 私も勿論本気でジェットフォイルをもう一隻投入できるとは考えていません。そこはお聞き流しください。
 それにしても東海汽船船団の高齢化には不安が募ります。かめりあ丸が22年、さるびあ丸が17年、丈夫といわれているJFも28~9年という状況の中、具体的な代替の話がないというのは心配です。ただ、東海汽船だけの力では新造船建造はなかなか困難だと思われますので、東海汽船ファンさんがおっしゃるような上下分離方式も行政に検討してもらいたいものです。
 東海汽船ファンさんはいろいろお詳しいご様子ですね。本ブログは更新頻度、塩分ともに低いですが、またご意見を伺えれば幸いです。

投稿: へべれけ | 2009年7月 8日 (水) 11時42分

この記事へのコメントは終了しました。

« 仏岩に登る | トップページ | ミューザ川崎開館5周年記念演奏会 »