ミューザ川崎開館5周年記念演奏会
マーラー/交響曲第八番変ホ長調「千人の交響曲」
独 唱/澤畑恵美、腰越満美、中村恵理(ソプラノ)、
小山由美、谷口睦美(メゾソプラノ)、
福井敬(テノール)、久保和範(バリトン)、久保田真澄(バス)
合 唱/東響コーラス、東京少年少女合唱隊、ゆりがおか児童合唱団、
横須賀芸術劇場少年少女合唱団
管絃楽/東京交響楽団
指 揮/飯森範親
二〇〇九年七月一日ミューザ川崎シンフォニーホール
自称「マラ八マニア」なので、一応聴きに行ってみた。入り口で空港にあるような金属探知機を並べてセキュリティチェックをやっていたので何事かと思ったら、皇太子が来場していた模様(私の席からは見えなかったが)。鞄の中の刃渡り約六センチの肥後守はスルー。大丈夫なのか?。
在京オケの中では東響が一番苦手な気がする。最初に定期会員になったオケだったのだけれど、秋山、大友という上品な指揮者陣が嫌いで、いい育ちしてそうな飯森にも興味が無かった。なので、飯森を生で聴くのは初めてだ。
総論から言えば練習不足。手兵オケにしては落っこちが散見され、集中力を欠く。まだ若いんだから色々思い切ったやり方が出来る(元々そういうタイプではないように感じたが)と思うのだが徹底不足、というか勉強不足だろう。時たま取って付けたような表情やテンポが現れるが、ここは手兵オケの悪さで、共感していないのに表面だけ合わせるから、すごく白けた音楽になる。そもそも祝祭色を押し出したいのか、音楽的に深めたいのかアプローチのしかたが曖昧だ。第一部のコーダでテンポを煽っていく所などはいかにも誰もが思いつくが、楽譜をよく読めば間違ったアプローチだと判りそうなものだ。
オケは音色に色気がなく、音量もない。昨年同じホールで聴いたインバル/都響と比べると大人と子供のような違いだ。近頃流行の対向配置だったが、プルトの表裏は普段と同じ(チェロバスは舞台側の奏者が譜面をめくる)なので、単にオケがやりにくいだけで、演奏上の効果があったとは思えない。木管のベルアップを忠実にやらせているわりには、第一部の複数シンバルは一回目が一人で二枚の吊りシンバル、二回目は一人でクラッシュシンバル(打楽器奏者はもう一人手が空いてたのに)という最低限対応。見た目を取るか実際の音量を取るかもはっきりしない。更にはオルガンが変なところで妙にでかい音を出して耳障りだったりした。
合唱は好演。児童合唱はもう少し前に出て欲しかったがまあ好演。ソリストは第一ソプラノとメゾの二人が好演。バリトン、バスはやはり声量不足。そして第二ソプラノは下手、テノールはもっと下手。第二ソプラノは単に技量不足なので仕方ないが、テノールはセンスの問題。声自体も決して良くはないのだが、節回しが悪いのだ。演歌のようにコブシを利かせて、フレーズの終わりをズバッと切る。唱っている本人は気持ちがいいのかも知れないが、聴かされる方は不愉快だ。
「千人」を十数回聴いたが、恐らく今回が最低だと感じた。おそらく「やっつけ仕事」だったのだろう。しかし、三十年前のやっつけ仕事「藤沢の千人」では、大破綻が何ヶ所も起きているのに感動的な演奏になっているのに、今回は何も残らない。オケの技量が上がったので、「千人」をやっつけでもそつなく演奏できるようになったせいで、破綻も感動もない「千人」が生まれたのだろう。
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