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2009年8月13日 (木)

ヤマカズのベートーヴェン

 一昨年の今日、八月十三日に山田一雄指揮京都市交響楽団の「復活」がCD化されることについて書いた。丁度ヤマカズさんの十七回忌に因んでだったのだが、以降二年間で思いもよらない事になっている。タワーレコードを中心として廃盤となっていた音源の再発が相次いでいるのだ。

二〇〇七年九月 マーラー/交響曲第二番「復活」(タワーレコード/初CD化)
     同     モーツァルト/交響曲第四十一番「ジュピター」他(フォンテック/再発)
     同     チャイコフスキー/交響曲第五番(フォンテック/再発)
二〇〇八年五月 ベートーヴェン/交響曲第九番(タワーレコード/再発)
二〇〇八年七月 ムソルグスキー/「展覧会の絵」他(コロムビア/初出)
二〇〇八年十一月 マーラー/交響曲第八番「千人の交響曲」他(ソニー/初CD化)
二〇〇九年七月 ベートーヴェン/交響曲全集(タワーレコード/再発)

 二年前には「復活」だけでも望外の喜びで狂喜乱舞の状態だったが、まさかこのように後が続くとは予想しなかった。
 個人的には初出の「展覧会の絵」以外は全て聴いたことがある音源ではあったが、手頃な価格で再発してくれるということは、それだけ多くの人が聴くチャンスが増えるという事なので、大変有難いことである。

 七月に再発されたベートーヴェンの交響曲全集は、ヤマカズさんが最晩年に札幌交響楽団と行っていたベートーヴェン・チクルスの記録である。残念ながらヤマカズさんの逝去により最後の二回(交響曲第一番と「エグモント」全曲、ミサ・ソレムニス)は代演となったため、交響曲第一番のみ矢崎彦太郎の指揮で収録されている。ヤマカズさんの没後、札幌のファンダンゴというインディーズ・レーベルから発売されていたが、廃盤になって久しい。私は当時飛びついて購入し、全部揃えるとオマケでもらえたエグモント序曲のリハーサル風景の特典盤も所有している。今回の再発盤には初出時に余白に入っていたエグモント序曲が入っていない。
 まだ改めて聴き直してはいないが、今までの「復活」や「千人」に比べると、このベートーヴェンは若干条件が悪い。第一にヤマカズさんが最晩年であまり元気がない。私は確か亡くなる一年半くらい前からヤマカズさんを追っかけた(札幌までは行かなかったが)のだが、そのきっかけは実演に接して「最近元気がないな」と感じたからだった。このチクルスがもう十年早く(「復活」や「千人」と同じ頃に)行われていたら、オケはより下手だったかも知れないが、演奏自体はもっと活きが良かったかも知れない。第二にオケが下手なこと。九〇年前後の札響は在京オケより十年以上遅れている感じで、危険な箇所では大抵コケている。さらに、客演オケなので縦の線が揃わなすぎ(限度を超えている)る部分が散見される。スコアを見ながら落っこちたパートを探すには面白いかも知れない。そして第三に音が悪いこと。演奏会場は札幌コンサートホールが出来る前なので北海道厚生年金会館だが、ホールの音響条件が悪いのではない。それを言い出したら「復活」の京都会館も、「千人」の藤沢市民会館も音響的に優れたホールではない。しかし、「復活」「千人」は両方とも大御所相澤昭八郎が録音を担当した「レコード用の録音」であるのに対し、ベートーヴェンはあくまでも記録用の録音である。恐らくホールの定位置である高い位置からの三点吊りマイクだけで録っている感じで、定位も明瞭度も相当悪い。
 と、いろいろ条件は悪いのだが。それは再発してくれたことに対する喜びを百とするなら、不満は五~十くらいの比率で、とにかくよくぞ出してくれたというのが率直な気持ちである。取りあえず購入したままになっているので、今日の命日から改めて聴き直したいと思う。

 今後はN響団員との吹奏楽曲集がCD化されるようだ。しかし、多くのヤマカズファンが待ち望んでいるのは新響とのマーラーであろう。一九七九年から一九八八年にかけて行われた、日本で初めてのアマチュア・オーケストラによるマーラーの交響曲全曲演奏。新響が山田一雄追悼演奏会の時に作成したダイジェスト盤のCDで聴く限り、録音状態は芳しくないものの残っているはずだ。是非元テープが経年劣化でダメになる前にCD化していただけないものだろうか。採算に不安があるなら、完全予約生産でもいい。一組二万円くらいなら迷わず買いたいと思っているのだが。

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