多摩フィルハルモニア協会第五回定期演奏会
ヴァグナー/歌劇「タンホイザー」より「歌の殿堂」
マーラー/交響曲第二番ハ短調「復活」
独唱/津山恵(ソプラノ)、田中淑惠(メゾソプラノ)
合唱/多摩フィルハルモニア合唱団
管絃楽/フィルハルモニア多摩
指揮/今村能
二〇〇九年八月二日 立川市市民会館
多摩のプロオーケストラを標榜する団体の演奏会があったので足を運んでみた。何をもってプロオケと定義するかは難しいのだが、この場合はもちろん「プロの音楽家によるオーケストラ」の意であろう。見た感じは学校出たての若者たちが主体で、一部年寄りもいるという感じ。家から歩いて行ける場所で「復活」が聴けるというので、行きつけの飲み屋で一杯引っかけてから当日券で入場。全席自由三〇〇〇円だが、一階席は八割くらい入っていた。
前座はヴァグナーの「歌の殿堂」。中学の授業で歌わされたアレである。どうでもいいけど、「復活」の前にこの曲を演奏する意味は?。合唱の後ろにトランペットが十数名ずらりと並んでファンファーレを奏でる。音響的には一番高いところがいいのかも知れないが、視覚的にはその前に並んだ合唱(二列)に紛れて、何だかよくわからない。やはり前列に並べた方が視覚的効果はあったように感じる。合唱、オケとも無難な出来。十分もかからない小品なので、「休憩二十分」のアナウンスに場内から失笑が漏れる。
休憩後は「復活」。絃は十、八、八、八、六型で、合唱は約六十名。復活をやるには最小限の人数だ。絃は対向配置で、チェロバスが下手側、金管はホルンが第一ヴァイオリンの後ろ(下手)とトランペット・トロンボーンが第二ヴァイオリンの後ろ(上手)という並び。
プロオケとは言っても臨時編成であるから、独自の何かを持っているわけではない。今村の指揮は格好良くはないが、判りやすい棒で、オケは安心して演奏している感じ。内心期待していたハラハラするような場面には遭遇しなかったが、音程の悪さはどうにもならない。更に、低絃の非力さも致命的で、コントラバスの「ゴリッ」が腹に染みる箇所がさらっと流れてしまう。
それでも、オケだけの一~三楽章はまあまあだったと思うが、声楽が入ると更に苦しくなる。ソプラノ独唱は良かったが、メゾソプラノは明らかに声量不足。合唱も下手ではないのだが、流石に六十人ではどうにもならない。特に男声の人数が少ない(二十人くらい)ので、特定の声量のある人の声ばかり聞こえる。クライマックスでは当然迫力不足で、オケにかき消されて聞こえない場面も多い。
批判ばかりしても仕方ないので、良かった点。まず、立川のような田舎町で、アマチュアや学生オケでない「復活」が聴けたことが快挙。そして、小編成のオケだったため、普段聴こえないようなパートの音に気がついた。そして、一階の前寄りの席で聴いたので、対向配置にした意味がよく理解できた。先月の東響の千人では判らなかったが、第一第二ヴァイオリンが左右で掛け合う前提で書かれている部分が結構あることに、今更だが気づいたのは収穫だ(普段は安い席でしか聴かないからいけないのか)。
多摩フィルハルモニア協会という団体がどういう趣旨で活動しているのかが今ひとつ解り難い。今村能が既存のプロオケに相手にされないから組織した(この手の大先達が大巨匠U宿M人センセイ)のだったら別に興味はない。多摩地区にゆかりの(国立音大出身とか)音楽家たちが集まって活動の場を求めているのなら、六十人ばかりの合唱団を組織せずに、地元のアマチュア合唱団と協力すればいい。何も文化レヴェルの低い地で、減る一方のアマチュア合唱団人口を奪い合わなくてもいいのではないか。
地元でこのような活動が行われているのは結構な事で、支援したいという気持ちはあるのだが、正体がよく見えないのが残念である。
それはそれとして、歩いて行ける範囲で廉価に生演奏が聴けるのだから、また機会があったら聴きに行ってみようと思った。
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コメント
ふ〜ん。そんな演奏会があったのね。
前日の夜、立川市民会館(あえてアミューなどと呼ばない!)の地下会議室(会館側は「サブホール」という名目で貸し出しているが、とてもホールとは言えない!)で、とあるアマオケの練習に参加していたんだけど、気づきませんでした。
投稿: メタ坊 | 2009年8月 5日 (水) 23時57分
メタ坊さんこんにちは。
そうなんですよ。チラシも出回ってなくて、ホームページも
ろくに更新されてないわりには、良く入ってました。
金管ヘロヘロでしたけどね。
投稿: へべれけ | 2009年8月 7日 (金) 11時44分