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2009年8月 8日 (土)

中島みゆきのガラスCD(その一)

 この件については何か述べることに躊躇するのだが、敢えて書かせてもらう。基本的に苦情は受け付けない。

 中島みゆきのアルバムが高音質のガラスCDで再発されるそうである。二〇〇〇年以降に発売された八種のアルバムで、一枚九万四千五百円。ガラスCDは今までクラシックやジャズのアルバムはあったが、J-POPでは初めて。J-POP史上最高価格のアルバムになるのだそうだ。

 数年前から特にクラシックのアルバムでSHM-CD(Super High Material CD)とかHQCD(Hi Quality CD)などという売り文句の再発盤が増えている。ガラスCDを含めて簡単に説明すれば、CD(コンパクトディスク)の素材を良くして、音質が劇的に向上するという触れ込みである。
 それだけ聞くと結構な話のようにも聞こえるのだが、私は二つの点から違和感(というよりインチキ臭さ)を感じるのである。

一、素材云々を喧伝しているがフォーマットは変わらない
二、そもそも誰が高音質を求めているのか

 まず最初にはっきりしておきたいことは「録音された音質以上で再生することは出来ない」という大前提。中学生の時同じ部活のI君にカセットテープを貸したら、返してくれる時「メタルテープにダビングしたから、オレの方が音がいいぜ」と自慢された。幾らメタルの高級テープにダビングしても、私が貸した「BONのカセットテープに記録された音質」を越えることはあり得ないはずだ。同じ環境で元テープと比べて音が良くなったと感じるなら、それこそがプラセボ効果(偽薬効果、思い込み)である。
 ガラスCD、SHM-CD、HQCDというのはまさにこのプラセボ効果を狙っていると感じる。値段が常識はずれに高いガラスはその最たるものだ。残念ながら我々年寄りはCDの黎明期から見てきているので、昔一時的に流行った「アートン盤」「ゴールドCD」などのことを忘れていない。「従来のポリカーボネート(アルミ反射膜)では屈折率や透過率が云々」という謳い文句を、以前にも聞いたことがあるのだ。そしてそれらはいつの間にか市場から消滅していった。そもそもSHM-CD、HQCDなんてのは、ポリカーボネート素材であることに変わりはなく、「より高品質な」素材にしたという程度の話なのだから、良心的なレコード会社だったら黙って投入すべきレヴェルの話で、売り文句にすること自体が「今まで品質の劣る素材を使っていました」と告白しているようなものだ。
 話をガラスCDに戻しても同じ事で、究極の音質を提供するものではなく、究極の所有欲を満足させるアイテムであると思う。半永久的な寿命というのもCDが世に出てきた時と同じ触れ込みだ。普通のガラスは個体であるということに疑問を投げかける考え方もある(粘度が非常に高くなった液体であるという捉え方。古い教会のステンドグラスなどが重力によって垂れてくる例がある)くらいなので、当然強化ガラスを使うのだろう。普通のガラスみたいに簡単には割れないが、硬くて尖った物に当たると簡単に割れる可能性もある。シェラック素材のSP盤みたいに「落とすと割れます」と警告して、取り扱いに緊張感を持たせれば、より高級感を演出できるのだろうか。

 そう考えていくと「中島みゆき」という素材はガラスCDに最適だと思われる。究極のCDで提供するアーティストはある程度の高級感が無くてはいけない。チェッカーズ・ベストではちと納まりが悪いのだ。
 中島みゆきの宗教的なファンであれば、一枚十万円弱もお布施として払えるのだろう。そして、最近のアルバムに限定したのも利口だ。LP時代のアナログ録音だと、しっかりした再生装置を持っていれば、LPの方が音質的に優位になる可能性があるので、CDとしか比較できないアルバムを選択したのだろう。最近のレコード会社は、新譜が売れなくなった分、細かく稼ぐ知恵は身についているようだ。

 そもそも今時、きちんとした再生装置でCDをじっくり聴いている人がどれほどいるのか。私も含めて殆どの人がCDからMP3やWMAに変換して、携帯プレイヤーで聴いているのではないかと思う。つまり殆どの消費者が「CDの音質向上」を求めてはいないのだ。そして、一部のオーディオ愛好家は、高品質なCDよりSACDでの再発を求めているはずだ。理由は簡単。「どんな高級素材のCDより、SACDの方が高音質」だからだ。フォーマットの違いというのはそういうものだ。高品質CDというのは、たとえれば十四型のテレビの品質を上げているようなもので、どんなに素材を工夫して発色を良くしたところで、四十型のテレビには勝てるわけがないのだ。

 はっきり言って中島みゆきガラスCDは、ファンを小馬鹿にした商売だと思う。中島みゆきファンのためにすべきことは、アナログ録音の古い音源をSACD用に丁寧にマスタリングし直して、SACDで再発売することだと思う。ちょっと調べてみたら、中島みゆきのSACDはライヴ盤が一種出ているだけで、それも五チャンネル録音だからSACDで出したという事のようだ。SACDは五チャンネルのためにではなく、CDより高品位なフォーマットとして活用すべきだと思う。

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コメント

仰る通りだと思います。 中身は只の16bit44.1kHzです。
素材を変える事で音質は変わるのですが、それが良くなるわけではありません。あくまで変わっただけです。しかし、これが本当に高音質だと信じて買い直す方も多い様で、バカにされてるのか実際バカだから仕方ないのか…
SACDにすると中途半端な仕事では通用しないので、使い回しで素材変えるだけが横行しているんでしょうね

投稿: 隆文 | 2009年8月10日 (月) 09時12分

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