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2011年3月25日 (金)

にっぽんの客船タイムトリップ展

INAXギャラリー(二〇一一年三月三日~五月二十一日)

 東海汽船の株主総会へ行ってきた。事業報告の中で社長が、かめりあ丸の代替について触れ、二三年の内には建造しなければならないと発言していた。確かにここ二年は黒字で来ているが、震災の影響まで含んでいない発言なので、今現在の方針と思う方がいいだろう。震災の影響を考えると、燃料の高騰、経済の低迷、旅行需要の低下、船渠の混雑などで、当分は新造船どころではないような気がする。総会自体は毎年質疑応答で時間がかかる、「株主優待を五〇パーセントに戻せ!」「一円でも配当しろ!」の二大勢力が今年はおとなしかったせいで一時間で終了してしまい、時間が余ってしまった。

 そこで京橋のINAXギャラリーで開催されている「にっぽんの客船タイムトリップ展」を見てきた。これは昭和十年代に建造された客船二隻、大阪商船の「あるぜんちな丸」と東京湾汽船の「橘丸」を中心に、日本の客船黄金時代をデザインを中心に振り返る展覧会である。展示内容は写真、模型、パンフレット類が殆どで、それほど貴重なものという感じではないが、入場無料なのでついでがあったらちょっと見てくるといい感じだ。ブックレットも一五七五円で販売しており、期待して買ったが、要はこの展覧会の図録であった。
 勿論私は橘丸に期待して見に行ったのだが、メインはあるぜんちな丸で、橘丸については船内の写真や模型、竣工時のパンフレットが展示されているだけだった。橘丸の資料としては「日本の客船シリーズVol.1橘丸」(モデルアート)が建造から解体までを網羅しているので、資料的価値は高いと思う。
 さて、本展の主役あるぜんちな丸であるが、客船黄金期の最後に建造されたものの、僅か三年半の稼働で海軍に買収され、航空母艦に改造された後に失われた悲劇の船である。写真や模型で見る限り、戦前の日本にこれほどまでと思わせる、贅を尽くした客船である。展覧会の趣旨としては内装の装飾などをクローズアップしているが、私が感じたのは船自体の容姿の素晴らしさだった。
 現在、定期航路に就航しているカーフェリーは、大抵が見るも無残な容姿をしている。艫と舳先にランプを設けるために、艫には丸みが無く舳先には鋭さがない。新しいさんふらわあごーるど・ぱーる姉妹など角の取れた豆腐のような船形で、美しさのかけらも感じられない。東京湾フェリーや宮島航路みたいに、船としての容姿を完全に捨てているのなら諦めもつくが、どうもいただけないのだ。その点、豪華客船は美しい容姿が見られるが、こちらは生活臭がないので、実用品でないような気がして好きになれない。あるぜんちな丸は豪華客船と言われているが実際には貨客船なので、船体に対する居住区画が小さく、全体にスリムな形をしている。それに比べ橘丸は純客船なので、もう少し居住区画が詰まっている感じがする。そしてどちらも舳先と艫の形状がスマートで美しい。
 東海汽船で言えば一九六四年のさくら丸から一九七三年のさるびあ丸(橘丸の代替船)までの純客船群が容姿端麗な船たちだったと思う。その後建造された純客船は艫が丸くない上にシアーライン(舷側線)が真っ直ぐで趣がない。また、すとれちあ丸(一九七八年)以降の貨客船については、純客船とは尺度が異なるので比較できないが、質実剛健なすとれちあ丸が好きだった。
 現役の船に美しさを感じられない今日この頃だが、美しい船が二隻、東京近郊で現役で活躍している。一つは横浜港の遊覧船「ロイヤルウイング」。言うまでもなく元は関西汽船の「くれない丸」(一九六〇年)であり、日本の客船の美しさを集大成したような船だ。遊覧船なので今風の塗装になったり細部を改造されたりしているが、船全体の姿は溜息が出るほど美しい。そしてもう一つは神新汽船の「あぜりあ丸」(一九八八年)。小型の貨客船だが離島航路らしい頑丈な船体は、いかにも島民の暮らしを支えているという逞しさを感じられる船だ。そしてついでに付け加えると、この航路では「にっぽんの客船タイムトリップ展」に展示されていた花毛布を今でも見ることが出来る。生活航路で花毛布が見られるのは、日本中でここだけだろう。

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