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2011年11月26日 (土)

NHK交響楽団第一七一四回定期公演

NHK交響楽団第一七一四回定期公演

マーラー/リュッケルトによる五つの歌
マーラー/交響曲第四番ト長調

ダニエレ・ハルプヴァクス(ソプラノ)
管絃楽/NHK交響楽団
指揮/準・メルクル

二〇一一年十一月二十六日 NHKホール

 先々週に続き、N響の十一月A定期初日に足を運ぶ。

 A定期のピンチヒッターは準・メルクル。名前は聞いた事がある指揮者である。先ず、リュッケルトの詩による歌曲を五曲。順に「わたしの歌をのぞき見しないで」「ほのかなかおり」「真夜中に」「わたしはこの世に忘れられ」「美しさを愛するのか」。マーラー好きの私だが、歌曲は「若人の歌」くらいしか聴いていない。リュッケルト歌曲も一二度聴いた事があるという程度の曲ばかりだ。軽めの曲を先にやって、重めの曲を後半に配置した並びだが、最後の二曲が良かった。ハルプヴァクスは声量十分で、オケの伴奏と堂々と渡り合っており、メルクルは丁寧に伴奏していた。

 四番の交響曲は素晴らしかった。第一楽章から思い切ったテンポの緩急や表情付けで、メルクルはやりたい事を思い切ってやっている。その濃厚な音楽作りがマーラーの本質に迫っていると思う。続く第二楽章も同様に、ここはこんな風に演奏して欲しいと思う通りの演奏。N響も若干綻びはあるが良い反応で、人民席からは楽員の表情までは判らないが、楽しそうな音がしている。今回のコンサートマスターは、ゲストのヴェスコ・エシュケナージという人だが、第二楽章のソロも特筆すべき事は無かった。
 第三楽章は更に名演。下手に演奏すると退屈なBGMになる楽章だが、大丈夫かと心配になるような遅いテンポなのに音楽が充実しており、大袈裟でなくこの楽章がいつまでも終わらなければいいのにと思った。目を閉じて聴いていると、何度か自分が今何処にいるのか判らなくなるような(眠かっただけか?)陶酔感のある演奏だった。特筆すべきは楽譜に指定されている絃楽器のポルタメント(音のずり上げ、ずり下げ)をとても効果的に活かしていたこと。少し前にはポルタメントの指定はマーラーが活躍した時代の流行として、ほぼ採用しない指揮者が多かった。私も楽譜に書いてあるポルタメントを全て行うべきかと考えると結論が出ないが、然るべき箇所で上手に表現すると、この世の物とは思えないような世界が表現出来ると感じた。
 第四楽章は歌がメインになるので評価が変わってしまう。残念ながらハルプヴァクスの歌唱は、リュッケルトでは悪くないが四番ではダメ。バーンスタインが結果としては失敗と評価されているがボーイソプラノを起用した気持ちが理解出来るが、この曲はドラマティックな声で上手に唱ってはいけないのだと思う。ハルプヴァクスは声が太くて雄弁すぎ、音程の悪さもやや気になる。この楽章のソプラノ独唱は、天上からの声という雰囲気が必要なので軽い声質の方が向いているが、大編成のオーケストラに負けずに唱わなければならないので大変難しい役所である。

 二回続けて千五百円で素晴らしい演奏を聴く事が出来た。来週に迫ったデュトアの千人に期待が高まる。

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