かめりあ丸のスラスター故障
かめりあ丸のスラスター故障
東海汽船のウェブサイトを見ると、二月二十四日付けでこのような文が掲載されていた。
<以下引用>
かめりあ丸 ご乗船のお客様へお知らせ
弊社かめりあ丸について、現在、入出港作業時に使用いたします機器「バウスラスター」(横移動装置)に故障が発生いたしました。
そのため入出港時に波や風の影響を受けやすく、「無条件就航」の予定でも、各島の港湾状況によっては、接岸できない場合もございます。
なお、航海の安全上については、一切の影響はありません。
お客様におかれましては、ご賢察の程、お願い申し上げます。
平成24年 2月
東海汽船株式会社
<以上引用、改行位置変更>
日本語として変な所が多い文である。「航海の安全に」入出港作業は含まれないのかという疑問が湧く。更に、何を賢察すればいいのかよく判らない。賢察を求めるというのは、はっきり書けないけど事情は判りますよね、という意味合いだと思う。意訳すると「稼ぎ時の椿まつり期間に運休するわけにいかないので、故障したまま運航します。慣れない接岸作業に手間取り、うまく行かなかったり時間がかかったりするので、予期せぬ抜港があると思いますが勘弁してください。沈没したりすることはないから安心してね。」という意味だろうか。通常の接岸作業が出来ないのに、安全に「一切影響はありません」と言い切ってしまうあたりが、過去に八百長は一切無かったと言い切った某協会並に古い体質を感じさせる。
バウスラスターは船首を横異動させる装置で、接岸、離岸時に船体を旋回(回頭)させる動作をスムーズにする。基本構造は船首の船底に左舷右舷を貫通する穴を開け、その中にスクリューを仕込む。船首を右に回したければ、スクリューで右舷から左舷に水を送るのである。これを装備しない船は、接岸時に錨を降ろしておき、離岸時にはその錨を巻き上げる事により船首を岸壁から離さなければならない。つまり接岸の度に錨を降ろさなければならない。現在でも神新汽船のあぜりあ丸などは普通に行っているが、大型船にはまずバウスラスターが装備されている。
かめりあ丸も通常はバウスラスターを使って接離岸しているのだが、故障した状態で運行しているのなら面白そうだ。丁度退屈していたところなので、ちょっと乗りに行ってみることにした。
まずは竹芝桟橋19時45分の着を見物。普段より気持ち大きめに回り込み、しっかり錨を降ろして接岸する様子を確認。時間つなぎに新橋で一杯やってから乗船。昼から飲んでいたので22時20分着の横浜まで耐えられず寝込む。
翌朝六時、大島岡田港入港。甲板に出ると船尾の繋留索(ホーサー)が桟橋の繋船柱(ボラード、ビット)に掛かっているが、船と桟橋はかなり離れている。暫くもたもたしている感じだったが、船尾側の船員が桟橋に向かって、
「おーい、レッコー」
と大声で叫ぶ。この場合のレッコーとは「放せ」の意である。桟橋側の係員が係留索を外すと、かめりあ丸は港外へ出て行く。何千回も発着しているはずの岡田港で、まさかの接岸失敗である。大島灯台沖で左旋回したかめりあ丸は、再び岡田港へ入港。今度は巧く桟橋に近づいて船首、船尾とも繋留索が掛かる。強い風が船を桟橋から引き離す方向に吹いているのでなかなか近づけないが、時間を掛けてやっと接岸する。離岸は風向きが味方し、繋船索を外すと船体が自然に桟橋から離れる感じで順調。条件付きの利島でも若干苦戦しながら接岸。島影に入る新島では順調に接岸。
普段なら、接岸時は船員が繋船索の先に付けた先取りロープ(ヒービングライン)の先の錘をカウボーイのようにグルグル回して岸壁に放り投げるが、いつもより遠くまで先取りロープを投げなければならないので、大型フェリーで使うような圧縮空気式のもやい索発射器を使用しているのが珍しい。
恐らく時間の都合であろうが、上り欠航が決まっている式根島野伏港で予定通り下船するが、港を離れず桟橋の端で離岸の様子を見物する事にする。左舷着けで接岸しているかめりあ丸は、荷役が終わり繋船索を放すと錨を引いて船首を右に振る。錨はあまり沖に打ってあるわけではなく、船首が二十度程度回った所で巻き上がってしまう。そこで強い風が吹き、船体が桟橋に吹き寄せられてしまう。どうするのかハラハラして見ていると、かめりあ丸は前進をかけ、桟橋の防舷材で左舷をこすりながら直進で野伏港を出て行った。やはり、バウスラスターがないとかなり危なっかしい着離岸をしているように感じる。
自動車に例えればオートマチック車みたいなもので、それに慣れてしまうとマニュアル車を巧く運転出来なくなってしまうようなものだろう。安全な輸送と定時運航の確保のためにも、早くバウスラスターを直した方がいいのではないだろうか。
上り欠航なので村営連絡船にしきに初乗船して新島へ渡り、上りのかめりあ丸に再び乗船。大島元町港でジェットフォイルに乗り継ぐ。椿まつり期間中の元町港は団体客でごった返しており、乗り継いだ館山寄港便は満席。しかし、千葉からの団体客が多いらしく、館山で三分の一が下船する。館山港は新しい桟橋が竣工して、駅からのアクセスも随分良くなったようだ。これだけ需要があるなら館山寄港を土日のみ通年にしてもいいのではないかとも思った。
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