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2012年10月19日 (金)

ヤマカズ生誕百年

 今日十月十九日は指揮者・作曲家山田一雄(以下ヤマカズ)の百歳の誕生日である。ついこの間亡くなったような気がするが、一九九一年八月十三日に亡くなったので、もう二十一年も経ってしまった。大型免許を取るための合宿中で、何気なくつけたFMラジオから「今日は予定を変更して、今日亡くなった山田一雄さんの演奏をお聴きいただいて……」と聞いた時の衝撃を、今でもリアルに思い出してしまう。
 さて、嬉しいことにここ数年のヤマカズ・ルネッサンスの動きは少しづつ進んでおり、ここ暫くの間にCDがまた何枚か発売(再発を含む)された。

山田一雄の世界(ナクソス) 読売日響
 追悼盤として学研から発売された「山田一雄の世界」からペール・ギュントの四曲を外し、アルルの女の三曲を加えた内容。ファランドール以外のアルルの女から三曲が初CD化。一九七〇年代から八〇年代にかけてのスタジオ録音で、当時盛んに行われた、学習教材用の収録。なので、演奏は特筆すべき事はない手堅い演奏だ。学研にはかなりの数の録音が残されているはずであり、小出しにしないでまとめて出してくれたらいいのにと思う。

ブラームス/交響曲第二番(タワーレコード) 新日本フィル
 別項で詳述したので省略。

モーツァルトの夕べ(タワーレコード) 新日本フィル
 上記ブラ二や藤沢の千人と同じく、藤沢市民会館「山田一雄の世界」一九七八~七九年からの実況録音。「偽の女庭師」序曲、セレナータ・ノットゥルナ、グラン・パルティータの三曲が収録されているが、何故かグラン・パルティータの第二楽章が収録されておらず、元々省略して演奏されたのか、演奏はされたのだが録音に支障があって収録できないのか不明。演奏は少々荒っぽい所もあるが、ピリオド奏法などという下らないものが蔓延する前は、モーツァルトはこんなに楽しい音楽だったのだということを再認識させる演奏。とにかく聴いていて楽しく、幸せになれる演奏だ。録音もブラ二と違ってちゃんとしたステレオで収録されているので安心して聴ける。

レスピーギ/ローマの三部作(東武トレーディング) 東京都響
 生誕百年の目玉CD。一九八九年三月、サントリーホールでの録音。今までローマの松は新星日響との録音(一九八九年)がCD化されているが、都響との三部作揃は初出。ヤマカズにぴったりな音楽だが、期待を上回る名演。ローマの噴水の冒頭から、何とも言えない雰囲気が拡がる。曲が進むにつれてオーケストラも客席も暖まっていく様子が手に取るように感じられ、ローマの祭の最後などは息もつけないような迫力。まさにライヴの醍醐味を感じさせる。これぞヤマカズの実演である。出来ればこのCDは三曲続けて(順番に)聴いてもらいたい。サントリーホールの初期の録音にしては録音状態も良く、私にとってはローマの三部作のCDはこれ一枚あれば他は必要なくなってしまった。よくぞ、このような素晴らしい録音を発掘してくれたものだ。

 ヤマカズの話題になる度に同じ事ばかり書いて申し訳ないが、どうか新響とのマーラー全集をCD化してもらえないものだろうか。録音に不備のある曲もあるのは承知の上で、日本でのマーラー、否オーケストラの演奏史に残る事件を、是非聴ける形で後世に残して欲しいものだ。

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