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2012年12月19日 (水)

圓朝全集

円朝全集(全十三巻・別巻二) 岩波書店

 岩波書店から圓朝全集が刊行されるという新聞広告を見て狂喜した。私が生きている間に、まさかそんなことがあるとは思っていなかったので即決で注文した。注文しておいてから改めて内容を見てみたが、これが大変に素晴らしいのだ。

 圓朝全集は過去二回編纂されて、三回出版されている。

春陽堂版(一九二六~全十三巻、後に世界文庫一九六三年~)
角川書店版(一九七五年~全七巻)

 どちらも現物を見たことはないが、春陽堂版は旧字旧仮名、昭和の名人達が読んだのはこちらだ。角川書店版は新字新仮名だろう。春陽堂版は後に世界文庫に納めらた。私が圓朝に興味を持った学生時代には、古本屋で見つけた「牡丹灯籠」と「真景累ヶ淵」が面白くて何度も読み返し、是非他の作品も読んでみたいと思ったのだが、全集の古本は滅多に出回らない上に貧乏学生に手が出せる値段ではなかった。
 その後、赤塚の松月院(怪談乳房榎の舞台)を訪ねた時、地元の顕彰会が出版していた私家版の乳房榎(後にちくま文庫に所収)を手に入れたりしたが、まとまった形で圓朝ものに触れることはなかなか出来ずにいた。
 近年になって青空文庫(インターネット上の電子図書館)で世界文庫版を底本としたデータが続々と閲覧可能になってきた。更に、以前このブログにも書いたが、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーで初版本のスキャン画像が閲覧できるようになった。新字新仮名でスマートフォンでも読める青空文庫と、旧字旧仮名総ルビ句読点無しの初版が両方閲覧できるという、以前に比べれば十分満足できる環境と言える。しかし、私のような過去の遺物的人間は、どうしても文学作品は印刷された本の状態で読みたいという欲求を抑えきれない。仕方なく幾つかの作品を青空文庫からテキストデータでダウンロードし、ワープロソフトで縦書き印刷にして読んでみたりした。テキストデータをそのまま印刷するのではなく、フリーソフトやウェブのサービスを利用して仮名遣いを旧仮名に、漢字も旧漢字に変換(概ね一括出来るが、弁を辨、辯、瓣に戻すのなどは手動)したり、青空文庫では括弧書きになっているルビをワープロソフトで振り直したりという加工を加えたりするので結構な手間がかかる。それはそれで面白いので構わないのだが。

 今回の岩波書店版「円朝全集」は、ウェブサイトに内容見本が掲載されているが、嬉しいことに初版の挿絵入りで、何と旧仮名遣いである。流石に総ルビではないが、ほぼ初版並にルビが振ってあり、かなりオリジナルに近い作りとなっている。漢字が新漢字なのは仕方がないが、さすがは硬派の岩波書店。中途半端に圓朝などと表記せず、全て円朝で統一している所は方針がはっきりしていて良い。旧漢字を中途半端に使うと六代目三遊亭円樂みたいな噴飯ものの表記になるので、岩波書店(編集者?)の見識に敬意を表したい。

 既に第一回配本(第一巻、怪談牡丹燈籠、塩原多助一代記、鏡ケ池操松影)は刊行済みで、早速届くのが楽しみである。別巻含め十五巻、第一巻が八八二〇円なので、全巻揃いで約十三万円強くらいだろう。バラ売りはないので安い買い物ではないが、落語好き、圓朝好きだったらこの機会を逃す手はない。即決で購入である。
 なお、岩波書店のウェブサイトには内容見本として、塩原多助一代記から有名な青の別れの部分が掲載されている。ほんの二十ページほどだが、これをプリントアウトして読んだだけでもわくわくしてしまう。毎月一冊届く度にゆっくり読めるというのは何という楽しみだろう。これを読み終わる再来年の春頃までは頑張って生きようという気持ちになる。

(岩波書店のサイト)
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/092741+/index.html

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