« 球泉洞 | トップページ | 九州のカーフェリー »

2012年12月 4日 (火)

涅槃城

 大隅半島を佐多岬に向かって進んでいると、道端に「無垢世界 涅槃城」という巨大な看板が立っていた。余りの香ばしさに心惹かれるが多少の下調べが必要と感じたので、少しやり過ごしてからクルマを道端に駐めてスマートフォンで調べようとした。しかーし、一帯は人家もない山の中で携帯電話のサービス圏外。携帯の圏内に入ってから調べると、宗教団体の施設なのだが一般客にも一部開放されている模様。佐多岬の帰路に立ち寄ることにする。
 件の看板から脇道に入ると延々四キロほど進む。まず巨大な門が現れ、脇に案内図がある。資料館は一般開放しているようなので、資料館に向けて更に進む。道路脇で大勢の人たちが植栽の手入れをしているが、女性や子供も混じっている所を見ると造園業者ではなく信徒の方々ではないだろうか。
 小さな峠のような道を進むと奥の山の上に巨大な金色の涅槃像が見える。更に進むと広大な駐車場があり、先ほどの涅槃像の麓に資料館がある。クルマを駐めて恐る恐る中に入ると年配の女性が現れる。見学したい旨申し出ると色々な説明が始まる。まず賽銭箱のような物の前で幾らでも構わないからと喜捨を求められるので、取り敢えず百円投入。撮影禁止と注意書きがある壁に書かれた色々な教義(?)を付きっきりで説明される。何だかさっぱり理解できない話なので、まずは「へえ、宗教の施設なんですか」ととぼけた返答をし、後はひたすら「へえ、大したものですねえ」「へえ、立派な物ですねえ」と相槌を打つ。
 一通り説明を受けると解放され、地下の三十三体の仏像を見物する。廊下の両脇に一体づつ安置されているが、素人目にも不出来な仏像で、信仰心を持たない身には有難味を理解することは出来ない。一通り見終わって入口に戻るとさっきのオバサンが「たくさん仏像があったでしょう」と再び話しかけてくる。「大したものですねえ。いい物を見せていただきました」と礼を言って辞去しようとすると、祭壇に線香を上げていくよう勧められる。ここまで勧誘するような話にはならなかったので、お礼のつもりで線香を上げ、何だか判らないものに手を合わせてから建物を出る。オバサンは土産物コーナーに寄るようにとか、広島に行くことがあったら教団の本部を訪ねるようにとか勧めてくれたが、余り面白くなさそうなのでそのまま帰ることにする。
 元来た道を戻っていくと、先ほどの植栽を手入れしている人々が、一斉に私のクルマに向かって合掌をする。私に仏の御利益があるように祈ってくれているのかと思ったが、どうも視線の方向がこちらに向かっていない。時刻は丁度正午だ。どうやら彼等は仕事の手を休めて、正午の祈りを本尊の涅槃像に捧げている所らしい。たまたまその方角から私が接近してきたようだ。
 資料館のオバサンも、植栽の信徒さんたちも何だか穏やかな表情で幸せそうな感じがした。山の中に突然大規模な施設が現れたので胡散臭さ満点という先入観で入ってみたが、中の人たちの穏やかな表情を見て、宗教とは究極のサービス業かも知れないと感じた。どこぞの教団のように組織犯罪などを企てない限り、信者の心を穏やかにする対価としてお布施を受け取るのは、遊園地や音楽会と変わらない商行為と考えていいのではないだろうか。
 案内看板の脱力臭に惹かれて入ってみた涅槃城だが、規模が大きくてびっくりする以外は真面目な宗教施設で。静かに見学するべき場所であると思う。

|

« 球泉洞 | トップページ | 九州のカーフェリー »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 球泉洞 | トップページ | 九州のカーフェリー »