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2013年3月19日 (火)

TALEXの偏光グラス

 TALEXといえば、釣り師にとって憧れの偏光グラスのブランドである。昨シーズンの前、正確に言うと去年の一月に、私はTALEXの度入り偏光グラスを作った。フレームとレンズ、加工料等含め約四万五千円。手取りの給料約六日分という高額な買い物で、まさに清水の舞台から飛び降りる覚悟であった。

 私の視力はここ数年の平均で右が〇、六、左が〇、四。普段の生活は裸眼で、運転、観劇、釣りなどの時のみ眼鏡使用である。釣り用のメガネは、鮎釣りの場合十数メートル先の小さな目印が見えなければいけないので、視力が一、五出るくらいの度が欲しい。
 ところが、一年前に偏光グラスを作った頃、何故だか右目がよく見えており、裸眼視力で一、〇もあり、〇、四の左目との差が激しかった。視力を測定してくれた店員に、「普段は裸眼で釣り専用」と伝えたのだが、眼鏡屋というのは左右同じような矯正視力にしようとするらしく、最初提案された度数は右がマイナス〇、二五、左がマイナス一、〇だった。これでは左目が見えすぎて怖いと訴えた結果、度数は右がマイナス〇、五、左がマイナス一、〇となった。
 ところが、偏光グラスが出来て暫くすると、私の右目の視力は平常値の〇、六程度に戻ってしまい矯正視力では左一、五、右一、〇程度になってしまった。裸眼の時には右の方がよく見えるのに、眼鏡をかけると左目の方がよく見えるというのは思いの外不便で、特に河原を歩く時などに足元の距離感が掴めずにつまづくことが多い。足場を決めればあまり動かない鮎釣りではさほど問題はないが、足場の悪い源流を遡行する沢釣りなどでは危険極まりない。結局、渓流釣りの時は古い偏光グラスを使っていた。
 それ以前に使っていた度付き偏光グラス(一万円程度で作った安物)を調べてみると、左右同じ度数で作っており、こちらは違和感がない。結論として普段裸眼で生活している者は、矯正時に左右の視力差を解消しない方が違和感がない(程度はあるが)ということを実感した。
 そこで、TALEXの偏光グラスも左右同じ度数に変更、つまり右のレンズをマイナス一、〇に変更することにした。

 ところが、去年世話になった店に行き、右側だけレンズを交換したい旨告げると、店員は渋い顔をして、基本的にレンズは左右セットでしか販売しないので、メーカーに確認を取るという回答であった。日曜日だったので翌日連絡をもらうことにして店を辞去。翌日電話があり「左右セットでないと販売出来ない」との回答であった。販売店を責めても仕方ないので、メーカーの問い合わせフォームに事情を説明して問い合わせた所、次のような返信が来た。

(前略)
弊社にてペアのみの販売をさせて頂いております理由としまして、
度付度なしにかかわらず、レンズをペア単位にて製品管理し、
全てのお客様に安心して長期間お使い頂ければと考えております。

また、ご使用途中で片眼のみを交換してご提供する事につきましても、
左右で経過環境が異なる為、
長期ご使用にあたり、安心してお使い頂くお約束ができない為
左右両眼交換のみの対応とさせて頂いております。
(後略)

 色々調べて見た所、クリアレンズ(普通の眼鏡)は片側のみの交換をしてくれるが、カラーレンズは色味が違ってしまうのでペアでないと交換してくれないという事が多いようだ。
 それにしても、ウェブサイトでは最高の品質を謳っているのに、つまりはロットごと色味にばらつきがあるということだろうか。たった一年ほど前に販売した製品と同じ品質が保証出来ないとはお粗末な気がする。
 TALEXは長期間安心してお使いいただくと言うわりに、保証はごく普通に一年だけ。ナンガのシュラフみたいに、本当に品質に自信があるメーカーは永久保証をする所だってあるのに。
 早い話が、作り上げた高級ブランドイメージを笠に着た、非常に強気な商売である。普通のサングラスメーカーは左右ペアでないと販売しませんが、当社は高い品質と技術力が自慢ですから、片側だけでも色味もちゃんと揃えて対応しますよと言えば、メーカーとして信頼度が急上昇するだろう。あるいは、一年以上前の物なので、色味に若干の違いが出ますがご了承下さいとでも言えば、正直な姿勢に好感度も上がるだろう。そもそも色の見え方なんて左右の目で随分違うものだから、ちゃんと偏光で度数が合っていれば、多少色味が違っても構わないのに。

 せっかく気に入っていた偏光グラスなので、片側のレンズのみ有償(単純計算で一枚一万九千円プラス工賃)で交換してくれるなら末永く使いたかったが、ペア(三万八千円)でないと対応しないというならば仕方がない。だったら新しくフレームごと作り直して、今のものは予備用としてお蔵入りさせるという判断になる。勿論、別のメーカーで作り直すという結論になるのが当然だ。
 品質と長期間使用を売りにしているTALEXだが実体はこの程度。万年筆業界のモンブランみたいに、高いブランド品を所有することにステータスを感じる層からは支持されるのだろうが、実用性を求める私にとっては何の魅力もないメーカーになった。ま、正直、ブランドイメージに騙されていた私が愚かだったわけで、一シーズンもまともに使えなかった(釣行回数約二〇回)偏光グラス四万五千円は高い授業料だったということだ。

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2013年3月 8日 (金)

どうするエクストン

ベートーヴェン/交響曲全集

管絃楽/チェコ・フィルハーモニー管絃楽団
指揮/小林研一郎

エクストン(オクタヴィアレコード)から刊行中

 小林研一郎(以下コバケン)指揮チェコ・フィルハーモニー管絃楽団によるベートーヴェンの交響曲全集が録音セッションが続いており、既に四枚のCDが発売されている。

二〇一〇年一二月一五日発売
・交響曲第三番(二〇一〇年 四月二九~三〇日録音)

二〇一一年 四月二七日発売
・交響曲第二番(二〇一〇年 四月二九~三〇日録音)
・交響曲第五番(二〇一〇年一一月一八~一九日録音)

二〇一一年 七月二一日発売
・交響曲第七番(二〇一一年 四月一四~一六日録音)
・交響曲第一番(二〇一一年 四月一四~一六日録音)

二〇一二年 一月二五日発売
・交響曲第六番(二〇一〇年一一月一八~一九日録音)
・交響曲第四番(二〇一二年一〇月一九~二〇日録音)

 最初から「ベートーヴェン交響曲全集」の第一弾という触れ込みでの発売だったが、四枚目が発売された段階で今後の発売に大きな疑問が湧いたのである。

 CDでベートーヴェンの交響曲全集を作る場合、五枚のCDに収めるのが普通である。一~八番を一枚に二曲づつ、そして九番を単独で一枚。第九が遅すぎてCD一枚に収まらない朝比奈盤のような場合は例外だが、大抵は時間的に五枚で収まるのである。
 コバケンの場合は三番が単独だったので、三枚目が出た段階で「六枚組にして、残りは四、八番の組み合わせと、六番と九番が一枚づつ」であろうと予想した。ところが四枚目は四、六番の組み合わせで、残りは八番と九番の二曲となった。残り二曲は到底一枚のCDには収まらない。七〇分ほどかかる九番は単独でもいいが、二五分程度の八番一曲では一枚売りのCD商品として内容が薄い。エクストン社はあと二曲をどのような形で発売するのだろうか。

 エクストン・レーヴェルといえば、活気の無いクラシック業界で気を吐いているレーヴェルで、特に邦人演奏家の録音を次々にリリースしてくれる姿勢に感謝以外の言葉はない。しかし、何故かレーヴェル設立当初から現在まで、どうしても胡散臭さを払拭出来ない印象があるのだ。
 確かケチの付き始めは朝比奈のブルックナーだったと思う。朝比奈隆の追悼盤として発売されたブルックナーの交響曲第八番が発売後に編集ミス(編集点を誤って一小節カットしてしまった)が発覚したのに自社ウェブサイトでのみ期限を切って交換対応した。それに怒ったファンが粗探しを始め、スケルツォの冒頭とダカーポ時が同じ素材を二度使っている(何かが転がるノイズで判明)ことも発覚した。これにより、不誠実かついい加減な編集をした物を売った挙げ句、不良品対応もやる気がないというイメージが出来てしまった。
 そして、エクストンの印象を更に悪くさせたのが、新旧録音の混在盤。一枚のCDのうち、半分は新録音なんだけど半分は既出盤からの再発売というやり方。新録音が聴きたければ必然的に既に持っている音源を重複購入しなければならない。私のように、コバケンの新録音が出たら取り敢えず買うという層にとっては、非常にバカにされているような気分になるやり方だ。最近で言うと一八一二年とくるみ割り人形組曲が入ったCDがこれに当たり。一八一二年を聴きたければ、既に持っているくるみ割り人形も抱き合わせで買わなければならないのだ。
 更に私のエクストン不信を決定的にしたのが二〇〇八年七月二三日発売の、コバケン/チェコ・フィルによるブラームスの交響曲第二番と、同第四番。同じ服を着たコバケンがジャケットの二枚のCDがレコード屋の店頭に並んだので、「今度はチェコ・フィルとブラームス全集を作るのか」と思って二枚とも購入した。

二〇〇八年 七月二三日発売
・ブラームス/交響曲第二番(二〇〇二年 四月二五~二六日録音)初回限定ゴールド盤
・ブラームス/交響曲第四番(二〇〇八年 二月 七~ 九日録音)初回限定ゴールド盤

 ところが家に帰って改めて見ると、このように録音時期がかけ離れている。おやおやと思ってCD棚を探ってみると、こんな物を発見する。

二〇〇二年一一月二〇日発売
・ブラームス/交響曲第二番(二〇〇二年 四月二五~二六日録音)SACDハイブリッド盤

(ジャケット写真)
Kobabra24
(左)2002年初出の2番 (中)2008年再発の2番 (右)2008年初出の4番

 二番の方は六年も前に発売され、その時に購入していた音源そのまんまだったのである。確かにインレイに録音データは明記してあるので、それをちゃんと確認してから買えばいいと言われるかも知れない。しかし、双子のようにそっくりなジャケットで、両方とも「初回限定ゴールド・ディスク」というシールを貼られて新譜コーナーに並べられた二枚のCDの、片方が再発盤だとは思わないのが普通だろう。いや、はっきり言ってわざとやっている。つまり私のようなおっちょこちょいが両方新録音だと勘違いして買う事を狙っているとしか思えないのである。
 そんなことで、録音活動には敬意を、商売のやり方には警戒を感じるエクストンだが、コバケンのベートーヴェンはどうするつもりなのだろうか。今後の発売方法は、幾つか予想出来ると思う。

一、八番無しの「交響曲選集」とする。

 確認は取れていないが、八番は四番と一緒に録音済みらしいので、これはないだろう。

二、序曲などの管弦楽曲数曲(新禄音)と八番を組み合わせて発売する。

 一番まともな方法。付け合わせにする音源があるのかと、八番メインだと商品として弱いのが欠点。

三、八番と九番で二枚組CDとして発売

 二の弱点を克服。内容的にCD一枚半になるので、値段も通常の二枚組よりも抑えれば良心的。

四、既出の三番と八番を組み合わせて発売する。

 エクストンの常套手段。三番だけのCDは廃盤にして抱き合わせ販売。コバケンファンの手元には三番がダブって残る事になる。

五、八番はバラ売りせず「交響曲全集」セットにのみ所収して発売する。

 最も阿漕な手口となるが、あり得なくはないと思う。残念ながらこうされたら全集セットを買わざるを得なくなる。

 私がエクストンの社長だったら答えは三。バラでは売りにくい八番と、DVDを含めれば四種類も出ていて、こちらもバラではアピールしにくい九番を併せて、二枚組三千円というところが妥当な線のように思う。

 やや(かなり?)エクストン社を揶揄するような書き方にはなったが、要するに私は早く残りの二曲が聴きたいし、また変な売り方をして顰蹙を買わなければいいなと心配しているのである。

(追記)
 エクストンから発売予告が出て答えが判明。第八と第九のカップリング(二枚組)で価格は三千五百円。組み合わせはまっとうだが、価格は割高感がある。まあ無難なところであろう。四月二十四日の発売が楽しみである。

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