釣り堀の愉悦
現在私の第一の趣味は釣りである。一口に釣りと言っても様々なジャンルがあるが、メインは夏の鮎釣り、次が春の渓流釣り、ワカサギやその他淡水の小物釣り、乗合船でのアジ釣り、堤防での小物釣りなどをやる。一貫しているのは釣った魚は持ち帰って食べることだ。仕掛け作りなどの準備から、捌いて食べるまでが釣りだと思っている。しかし、釣った魚を持ち帰らない釣りもやる。それが釣り堀での鯉釣りだ。
私が子供だった頃は、自宅から自転車で行ける範囲に沢山の釣り堀があった。ざっと思い出すだけで、現在の柴崎体育館駅の下にあった釣り堀(鯉と鮒、へら鮒)、日野橋の南詰にあった室内釣り堀(鯉と金魚)、高幡橋の北詰にあった釣り堀(鯉、へら鮒)、国立の電電公社の近くにあった室内釣り堀(金魚)、八王子の左入町にあった釣り堀(鯉)など。へら鮒釣りに興味を持ち始めた頃に中学に入り、部活が忙しくなって釣りからは離れてしまったので、へら鮒の釣り堀のことは詳しくないが、もっと沢山あったかも知れない。
現在ではこれらの釣り堀はみんな廃業してしまった。長年通勤電車の車窓から眺めていた武蔵境の武蔵野フィッシングセンターも昨年十一月に廃業し、多摩地区の釣り堀は随分寂しくなった。今でも頑張って営業しているのは東村山の小島園、八王子の森屋荘、瑞穂の駒形つりぼり、清瀬の伊藤園、府中へら鮒センターくらいだろうか(鯉釣りの出来る釣り堀のみ)。
へら鮒釣りはなかなか高度な釣りで、それなりの装備と技術が必要でやや敷居が高い。それに比べ、鯉釣りはお手軽なので、万人にお勧めできる手軽なレジャーだ。私が行ったことがある鯉の釣り堀は、森屋荘と駒形つりぼりだ。
瑞穂町二本木にある駒形つりぼりは、鯉と金魚の釣り堀。鯉釣りは屋外池の他に室内池があるので、冬場や雨の日の遊び場には好適だ。ただし野外も室外も狭い池なので、竿仕掛けを持ち込むなら、野外一、八メートル、室内一、二メートル以内の竿でないと厳しい。私は室内池で一、八メートル竿を使って、買ったばかりのへら浮きを天井に当てて折ってしまった。
八王子市西寺方町にある森屋荘も鯉と金魚の釣り堀。鯉釣りは直径五十メートルもありそうなおむすび型の広大な池で、中央に木製の桟橋が突き出している。周りは里山と静かな住宅街に囲まれており、とても長閑な雰囲気だ。池が広いので竿は一、八から二、七メートル。空いている平日なら三、六メートルでもいいかも知れない。
たかが釣り堀の鯉釣りと侮るなかれ。仕掛けや餌を工夫し、へら鮒釣り並に魚信の見極めが出来るようになれば、確実に釣果に差が出てくる。貸し竿の素人さんたちが低調な中で、自分だけコンスタントに釣れるのは気分がいいものだ。話しかけてくる少年でもいれば、それは三十余年前の自分の姿。蘊蓄を語ったり、竿を貸してあげて、貸し竿と持ち込み竿の差を体感してもらい、釣り人口の減少に歯止めをかけるべく活動することもある。
こんな楽しい時間が、森屋荘の場合道具餌持ち込みなら一時間七百円、二時間千円、三時間千三百円、丸一日で二千五百円。八王子駅からバスも頻繁に出ているので、本格的な釣行では不可能な、缶ビール片手の釣りも可能だ。ついでだが、八王子からバスで行くときは宝生寺団地行きに乗って陵北大橋で降りるように森屋荘のウェブサイトには書いてあるが、バスの本数が多い切り通しで降りて人道橋で北浅川を渡ると近い。この人道橋は地元有志が架けているらしいが、脇に「違法建築なので撤去するように」という警告看板が立っていて面白い。
先日はいとこ兄妹と三人で森屋荘に行き一日楽しんできた。午前中から夕方まで頑張って三十七匹。朝は大物が連発したかと思うと、昼前後の二時間くらいは全く釣れなかったりして、なかなか難しい。私は同行者が下戸なのをいいことに着くなり缶ビールをあける体たらくで、釣りに来たのか飲みに来たのか判らないような状態だったが、実に楽しい休日を過ごすことが出来た。
見たところ到底儲かっているようには見受けられない釣り堀だが、頑張って営業を続けてくれることを祈りつつ、鮎シーズン以外には時々通おうと思っている。
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