多摩川の河川改良工事
多摩川の河川改良工事
去年から今年の春にかけて、多摩川の日野橋下流で河川改良工事をしていた。かなり大規模にやっていたので気になっていたが、工事が完了した様子である。工事前の多摩川の流れは日野橋直下では左岸(立川寄り)に集まっており、日野橋を超えたところで大きく蛇行して右岸(日野寄り)に集まって護岸の際に深い流れを作り、そこから中央道の橋に向かって流れが開けていた。ところが、工事完了後は蛇行していた川の氾濫原一杯を真っ平らに整地して、流芯の無いシーツを広げたような薄い流れが一面に広がっている。
これなら長靴を履けば川を渡ることが出来るので、とても便利になって近隣住民も税金の払い甲斐があるというところだろう。大規模な土木工事だから数百万、いやもう一桁上の経費がかかっていると思うが、長靴で渡りたい近隣住民、施工した土建屋、魚を食べに来るカワウの三者にとってメリットがあるのだから万々歳である。もっとも、川に住んでいる魚たちにとっては、カワウの捕食から逃れられる深場が無くなって気の毒ではある。おそらくカワウの組合は国交省に袖の下を掴ませて、小魚の組合は付け届けをしなかったのだろうから仕方がない。
もっとも、元々流れが蛇行していたのは前後の地形に由来しているので、大雨が降れば流れが河床を削って、再び蛇行した流れになることは明らかだ。その時はまた大々的に河川改良工事をやればいい。今からでも遅くないから、河川工事専門の土建屋を開業したい。
話は変わるが、鮎釣りの解禁も近くなったので、多摩川の鮎の遡上状況を確認に行ってみた。東京都島しょ農林水産総合センターの調べによれば、今年の鮎の遡上量は五月二十四日現在で推定三百九十四万匹。昨年の千二百十三万匹、一昨年の六百九十八万匹には届かないが二〇一〇年以前に比べれば良好な遡上数である。しかしこの数値は下流のガス橋近辺の数値で、私が様子を見に行った日野用水堰あたりでは鮎の遡上は気配すら感じられない。遡上数で言えばずっと少なかった二〇一〇年には、五月に入ると日野用水堰で子鮎が群れを成して跳ね回っていたのに。これはつまり、海から遡上してきた鮎が、どこかで遡上を阻まれているのだろう。四谷本宿床止近くの看板には、多摩川の魚道整備が進んで河口から川井堰まで遡上出来ると説明されている。しかしこれが絵空事だということは、現実に鮎が遡上していないことを見れば明らかだ。そして、その理由が日野用水堰で確認出来る。堰の両脇に設置した魚道の下流側に土砂が堆積して登り口を塞いでいるのだ。
この魚道はハーフコーン型と言って、魚が行き来し易い実績のあるものらしいのだが、肝心の魚道の入り口が土砂で埋まっていては役に立たない。おそらく下流のどこかの堰でも同じようなことが起こっており、そこで遡上が止まっているのだと思う。魚道工事という事業が終了したら、後はどうなろうと放置したままという。典型的な役所仕事である。
東京都内でこれだけの鮎の遡上がある河川なのだ。環境を整備して、奥多摩や秋川まで遡上出来るようにすれば釣り場として大変魅力的になり、無駄な工事や放流事業をするより良い循環が出来るはずなのに勿体ない話だ。国も漁協も予算を消化する為の事業でなく、川が自然な生産力を取り戻せるような整備事業をやってほしいものだ。
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