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2013年6月17日 (月)

NHKホールのスウィートスポット

 前売り券を買わずにN響の定期公演を聴きに行くことがよくある。当然だが、サントリーホールのB定期は当日券など出ないので、NHKホールのA定期とC定期、それも三階後方の自由席であるE席専門である。私が学生の頃は千円だったと記憶しているが、いつからか値上げされて今は千五百円だ。映画とほぼ同じ値段でN響を生で聴けるというのは有り難い。でも、この話をちょっとクラシックに詳しい人にすると、「でもNHKホールの三階でしょ。舞台が遠いのはともかく、音がねえ・・・」という反応が返ってくることが多い。確かに私もNHKホールがオーケストラ公演の会場として最適であるとは思わないが、経験上世間で言うほど酷くないと思っている。
 クラシック音楽に適したホールは残響が二秒以上という迷信があり、今から二十年くらい前は殆どのクラシックファンが鵜呑みにしていた。その頃のNHKホールの評判は最低で、N響が可哀想だという声を良く聞いた。また、根も葉もない「三階席はPAを入れている」という噂も飛び交っていた。現在ではそこまでこき下ろす意見はあまり聞かなくなったが、音響の悪いホールという評価は定着しているようだ。
 数値を見てみると座席数三四〇〇(可動席除く)で容積は約二五〇〇〇立米。一般的にデカ過ぎると認識されているようだが、容積で言えば札幌コンサートホール(二八八〇〇立米)、ミューザ川崎(二七三〇〇立米)より小さく、東京芸術劇場(二五三〇〇立米)とほぼ同じだ。札幌には行ったことはないが、ミューザ川崎も東京芸術劇場もオーケストラには好適なホールである。なので容積は問題ない。ネックになっているのは客席の横幅の広さだろうと思う。良いコンサートホールに重要な要素の一つが側方反射音(左右の壁からの反射音)であり、これを得るために客席を縦長の真四角にしたのがシューボックス型、客席の横幅を拡げる代わりに、区画と段差を設けて客席内のあちこちに壁を作ったのがワインヤード型のホールである。NHKホールや群馬音楽センターのように客席の横幅が広いホールでは、これが不足するので音がスカスカな感じがするのだ。だから、逆にこのことを踏まえて席を選べば、きっとNHKホールの三階席にも、音響的に満足できる席があるのではないか。
 こう考えてN響の定期公演に通うこと十数回。今までに座った席を座席表に落とし込んでみると、ほぼ三階席全体に散らばっている。結論を言えばNHKホールの三階にスウィートスポットはある。前段の話からすれば当然左右の壁寄りがいいのは想像がつくが、ただ壁寄りならどこでもいいというわけでもなく、微妙なバランスがあるようだ。それがどこかと言うことは敢えてここには書かない。CMの言い訳じゃないけどあくまで個人の感想であるし、鵜呑みにされて席が取りにくくなっても嫌だ。ただし、ヒントを言うとD席(指定席)とE席(自由席)のどちらにもスウィートスポットはあるので、満席必至の人気公演の時は前売りでおさえることも可能である。これに気づいてしまうと、三階の中央の席に陣取っている、定期会員や早めに自由席を確保した人たちが気の毒な気がしてしまう。三階なんてどの席でも舞台が遠いのに変わりはないのだから、漫然と真ん中に座るのではなく音のいい席を探すのも楽しみである。

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2013年6月 3日 (月)

東京フィル第七十八回東京オペラシティ定期演奏会

レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ/交響詩「ローマの祭り」
レスピーギ/交響詩「ローマの松」

管絃楽/東京フィルハーモニー交響楽団
指揮/アンドレア・バッティストーニ

二〇一三年五月三〇日(木)東京オペラシティコンサートホール

 東フィルの演奏会にエキストラで参加しているN女史から、「すごくいい指揮者だよ」というメールが届く。ローマ三部作は大好きだから聴きに行こうか迷っていたのだが、指揮者が無名なのでチケットを取らなかった演奏会だ。そんなにいい指揮者ならと当日券で入場。大編成の曲なのでオペラシティより翌日のサントリーホールで聴きたかったが、仕事の都合でオペラシティで聴く。

 バッティストーニは二十代半ば。チラシの写真では判らないが、巨漢指揮者だ。若手指揮者にしては素人っぽい指揮ぶりなのだが、棒は下手だが表現意欲に溢れている感じが若手らしくてとても好ましい。日本のひと頃の若手指揮者のように、斉藤式の器用な棒を振るだけで、どんな表現がしたいのかさっぱり判らない指揮者や、某美人指揮者のように自分を格好良く見せる以外に興味のない指揮者などは纏めて生ゴミの日に出してやりたい。バッティストーニは不器用な棒ながら、思い切った表情付けやルバートを駆使して、元々色彩的なこの三曲を、より鮮やかに表現していた。
 そしてさらに特筆すべきは東フィルの乗りの良さ。昨年オペラで協演して以来相性がいいらしいが、色々なことをやりたい盛りの若い指揮者を、しっかりと受け入れて一緒に楽しんでいるのが客席にも伝わってくる。なので当然のことながら、祭りと松の終曲は大音量の大スペクタクルになり、オーケストラの迫力を全身で受け止めることが出来た。もっとも、会場がオペラシティなので、このような部分では何をやっているのかは全く聴き取れず、大きな音の渦巻きに巻き込まれて何が何だか判らない状態になる。それはそれで心地よいのだが、やはり翌日のサントリーホール、あるいはより大編成向きの東京芸術劇場あたりで聴きたかった。オペラシティは二管十四型くらいまでの編成が適当だと思う。
 不思議なもので、オーケストラが乗って演奏している時は、その気分が客席にも伝わってくるものだ。この若さで強者揃いの東フィルをノリノリにしたバッティストーニは大したものだ。今回の東フィルとの協演は、この二回の演奏会だけのようだが、今後も定期的に客演してくれることを望みたい。トスカニーニの再来という陳腐なキャッチフレーズはどうかと思うが、将来が実に楽しみな指揮者である。

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