東京フィル第七十八回東京オペラシティ定期演奏会
レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ/交響詩「ローマの祭り」
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
管絃楽/東京フィルハーモニー交響楽団
指揮/アンドレア・バッティストーニ
二〇一三年五月三〇日(木)東京オペラシティコンサートホール
東フィルの演奏会にエキストラで参加しているN女史から、「すごくいい指揮者だよ」というメールが届く。ローマ三部作は大好きだから聴きに行こうか迷っていたのだが、指揮者が無名なのでチケットを取らなかった演奏会だ。そんなにいい指揮者ならと当日券で入場。大編成の曲なのでオペラシティより翌日のサントリーホールで聴きたかったが、仕事の都合でオペラシティで聴く。
バッティストーニは二十代半ば。チラシの写真では判らないが、巨漢指揮者だ。若手指揮者にしては素人っぽい指揮ぶりなのだが、棒は下手だが表現意欲に溢れている感じが若手らしくてとても好ましい。日本のひと頃の若手指揮者のように、斉藤式の器用な棒を振るだけで、どんな表現がしたいのかさっぱり判らない指揮者や、某美人指揮者のように自分を格好良く見せる以外に興味のない指揮者などは纏めて生ゴミの日に出してやりたい。バッティストーニは不器用な棒ながら、思い切った表情付けやルバートを駆使して、元々色彩的なこの三曲を、より鮮やかに表現していた。
そしてさらに特筆すべきは東フィルの乗りの良さ。昨年オペラで協演して以来相性がいいらしいが、色々なことをやりたい盛りの若い指揮者を、しっかりと受け入れて一緒に楽しんでいるのが客席にも伝わってくる。なので当然のことながら、祭りと松の終曲は大音量の大スペクタクルになり、オーケストラの迫力を全身で受け止めることが出来た。もっとも、会場がオペラシティなので、このような部分では何をやっているのかは全く聴き取れず、大きな音の渦巻きに巻き込まれて何が何だか判らない状態になる。それはそれで心地よいのだが、やはり翌日のサントリーホール、あるいはより大編成向きの東京芸術劇場あたりで聴きたかった。オペラシティは二管十四型くらいまでの編成が適当だと思う。
不思議なもので、オーケストラが乗って演奏している時は、その気分が客席にも伝わってくるものだ。この若さで強者揃いの東フィルをノリノリにしたバッティストーニは大したものだ。今回の東フィルとの協演は、この二回の演奏会だけのようだが、今後も定期的に客演してくれることを望みたい。トスカニーニの再来という陳腐なキャッチフレーズはどうかと思うが、将来が実に楽しみな指揮者である。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント