« 鈴本演芸場九月下席(夜の部) | トップページ | インバルの[新]マーラー・ツィクルス第Ⅱ期 »

2013年11月 1日 (金)

池袋演芸場十月下席(昼の部)

池袋演芸場十月下席(昼の部)

二〇一三年十月三十日(水)

「転失気」柳家さん坊
「使うかもしれない」古今亭駒次
(ジャグリング)ストレート松浦
「手紙無筆」金原亭馬遊
「四段目」初音家左橋
(漫才)ホンキートンク
「子ほめ」柳亭市馬
「彦六伝」林家木久扇
「二人旅」柳家小三治
   (仲入り)
(口上)柳亭市馬、林家木久扇、川柳つくし、川柳川柳、柳家小三治
(漫談)アサダ二世
「告知の作法」五明楼玉の輔
「ガーコン」川柳川柳
「目薬」古今亭志ん輔
(俗曲)柳家小菊
「健康診断に行こう」(+ウクレレ漫談)川柳つくし

 九月の鈴本に続いて池袋演芸場で川柳つくしの真打披露目を観る。
 駒次の新作は面白い。同じ鉄道好きなので多少贔屓目に見ていることは否定しないが、以前聞いた「鉄道戦国絵巻」は抱腹絶倒だった。東京在住で鉄道に興味がなければ全く面白くないが、噺家の数が飽和状態なのだから、得意ジャンルがあることはいいことだ。今日はゴミ屋敷に住む一家が断捨離する噺。妻の妄想ぶりが面白かったが、落げが読めてしまうのが少し残念。
 ストレート松浦のジャグリングは初めて見るが、太神楽の西洋版みたいなものだから、寄席とは相性が良く素直に楽しめる。馬遊、左橋とも短めの高座で、四段目は芝居を見ていたことが露見するところまで。ホンキートンクの漫才も勢いがあっていい。
 市馬は子ほめ、寄席で見るのは本当に久しぶりの木久扇はお馴染み彦六伝、小三治は二人旅と、披露目なので短めの高座が続く。
 口上は市馬、木久扇、つくし、川柳、小三治の五人、師匠の他が会長、副会長、相談役というのは豪華。木久扇の口上で、前座の時に川柳(当時さん生)の後援会発足について秩父へ行き、川柳が二日目の高座を酒で穴を開けた話は、以前つくしが話していたのを聞いていたが、当事者から語られると更に趣がある。小三治も川柳に迷惑をかけられた話が中心で、こんな師匠の元でよく頑張ったという論調。対して川柳は、自分が前座の頃圓生のお供で青山高校に仕事に行き、その時のさん生の弥次郎(本人は金明竹と記憶していたのを小三治が訂正)を聞いた郡山剛蔵少年が噺家になる決意をした。つまり、現柳家小三治会長はオレが作ったという話。その後ついでのように、古典落語は女には難しいという話。三本締めの前にもう一度小三治から、圓丈とは違う新しい新作を作れと言う激励があり、かなり内容たっぷりの口上を締めた。
 食いつきのアサダ二世は、楽屋が混んでいて手品を仕込めなかったと、シルクハットとトランプだけ持ってきたものの、今日は手品はやらないという。天一、天勝に始まる日本奇術界の草創期の話をする。見慣れている手品よりはこっちの方が面白かった。玉の輔は新米の医者が癌告知をする話。調べたところ告知の作法という演題らしい。回り落ちがとても良くできた噺だ。川柳は毎度お馴染みのガーコン。鈴本の時よりも調子がいいみたいで、「男の年寄りはダメだな」と小言も炸裂。「つくしの時は頼むよ」と弟子への思いやりもちょっと垣間見えた。志ん輔は目薬。マクラの医者の話が面白かったが、つくしの演題とついてしまったのが残念。小菊の俗曲も安心して聞ける芸で膝代わりにはぴったりだ。つくしは師匠川柳の話から入る。披露目直前にブラック師と飲んでいて階段から転落した話、続いて自分も原因不明の痣で医者に行ったら歳のせいだと言われた話に続いて「健康診断に行こう」。先日の「ソングコップ」に比べると落げが格段にうまく出来ている。主人公がオバサンなので、つくしが歳をとっても演じられるネタだと思う。一席終わったところでウクレレを持って漫談。お馴染みの「来世がんばれ」。聞いたことのあるネタが多かったが、牧伸二や堺すすむみたいに、このパターンで膨大なネタをストックすれば、どこでも使える飛び道具になるだろう。

 池袋演芸場は相変わらず客層はいい。ただし、食べるのと喋るのに夢中な婆さんグループはロビーでやってほしいし、一席終わる毎に便所へ行くらしい爺さんは出口の近くに座れと言いたい。極めつきは最前列に座ってずっとスマホのゲームをしている若造。私も学生の頃は、ぺぺ桜井が出てくると新聞を読んで、文句を言われたら「たまには違うネタやってみろ」と言い返してやろうと身構えていたりしたが、それは毎日同じネタしかやらない手抜き芸人に対する抗議の姿勢だった。後ろの席から画面が丸見えの位置でゲームをするのは、とても気が散って邪魔である。何を目当てに寄席に来ているのか判らないが、せめて他人に迷惑をかけないくらいの気遣いが出来ないのか。まあ、見た感じいかにも情緒不安定な感じだったので、その場で咎めれば逆ギレして、ゲームをする権利とか戯言を叫ぶのだろう。
 オイ、十月三十日池袋演芸場のA列7番の席でゲームをしていたゆとり世代。寄席では噺を聞け、ゲームは家でやれ!

|

« 鈴本演芸場九月下席(夜の部) | トップページ | インバルの[新]マーラー・ツィクルス第Ⅱ期 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。