« 間々観音 | トップページ | 子安大師 »

2013年12月 3日 (火)

常福寺大仏

 十年前くらいに廃止になった名鉄三河線の寺津駅の近くにコンクリート製の大仏がある。地元では借宿の大仏(おおぼとけ)さんと呼ばれているこの大仏は、一九二八年に昭和の御大典を記念して建立されたという。鉄筋コンクリート製で坐高七メートル、台座含め十四メートルで、胎内巡りも出来るらしい。

 朝早く訪ねてみると、赤銅色の大仏が朝日を浴びていた。西尾市観光協会の解説板によれば、建立当時寺に山門がなかったので、山門の代わりという意味と、漁師の安全を祈願するために大仏は本堂に背を向け、海に向かって鎮座している。コンクリート製ということだが、見た感じは金属製のように光沢のある質感である。調べたところコンクリートの表面を漆喰で仕上げ、塗装を施しているらしい。そしてこの大仏の最大の特徴は立派な光背が付いていること。背中と頭の後ろに配置した二つの輪が重なり合う、非常に精緻で芸術的な光背だが、よく見ると大仏本体には肩のところでちょっと触れているだけで、ほぼ自立した作りになっているようだ。とても華奢に見えるのだが、これもコンクリート製なのだろうか。屋外の大仏に光背があること自体が珍しいが、これほど美しい光背は例がないと思う。
 台座の背後側には扉があり開け放されている。中に入ると正面に阿弥陀如来像が安置してあり、左右には狭い階段がある。これが胎内への入口のようだ。コンクリートの狭い階段は、子供の頃遊んだ団地内の公園の遊具のような雰囲気でわくわくする。階段を上るとちょうど大仏のあぐらを組んだ足の位置で、天井には明かり取りの窓がある。大仏の背中側に祭壇があって、壁一面に仏画が描かれている。特にそれ以上何があるわけでもないが、管理者がいなくなって胎内に入れなくなった大仏を幾つも見ているので、見られるだけでも有り難いと思う。
 外へ出て再び大仏を見上げると、朝日を浴びた大仏の周りで数羽の雀が遊んでいる。近頃都会では目にすることの少なくなった雀だが、ここ西三河では元気に大仏と戯れている。光背や指先に止まっている雀と大仏の姿を見て、今まで見てきた大仏の中で一番幸せそうな表情に見えたのは、小春日和の暖かな日差しのせいだけではなかったと思う。
Photo

|

« 間々観音 | トップページ | 子安大師 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 間々観音 | トップページ | 子安大師 »