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2014年2月 1日 (土)

東京フィル第八四三回定期演奏会

東京フィルハーモニー交響楽団第八四三回サントリー定期シリーズ

二〇一四年一月三十一日サントリーホール

バーンスタイン/「ウェスト・サイド物語」~シンフォニック・ダンス
マーラー/交響曲第一番ニ長調「巨人」

管絃楽/東京フィルハーモニー交響楽団
指揮/アンドレア・バッティストーニ

 昨年、アンドレア・バッティストーニが東フィルを振った「ローマ三部作」を聴き、その若者らしい音楽がすっかり気に入ってしまった。しかし、以降来日の予定はなく、早く次の機会が来ないかと心待ちにしていた。そんな折、出産のため来日不能になった美人指揮者アロンドラ・デ・ラ・パーラの代演で東フィルの一月定期に登場すると聞き、喜んでチケットを購入した。

 前半のバーンスタインは勢いのある快演。元々どんなに頑張っても深い内容の曲ではないので、若い指揮者が勢いのある演奏をするのが向いている。老大家の枯れた演奏など想像しにくい曲だ。もっとも一九八五年に聴いたバーンスタインの実演は、老ジャズミュージシャンのような老練の味が出ていたが。バッティストーニは期待通り速めのテンポでキビキビと進めて小気味いい。東フィルも楽しんで演奏している。打楽器がフルに入ってくる部分になると音が飽和してしまい何だか判らなくなる。ローマ三部作でも感じたが、バッティストーニが振るとオーケストラが滅法良く鳴るのだが、まだ力業の感じで音にまとまりがないように感じる。
 後半のマーラーは素晴らしい演奏。特に前半二つの楽章が素晴らしかった。近年ではドゥダメル指揮シモン・ボリバル・ユース管の演奏(二〇〇八年)が若者らしい演奏で印象に残っているが、バッティストーニはそれよりずっと素晴らしい。冒頭こそおとなしめだが、主部に入るとテンポや強弱ニュアンスをやりたい放題に変化させていく。基本のテンポは速めだが、要所要所でルバートをかける。音楽が前へ前へ進んでいく感じがする。そして何と、提示部の繰り返しは省略。繰り返しを省略して喜ぶようなモノ好きは私くらいしか居ないのかも知れないが、音楽が前へ進みたがっているのに戻ってどうする。この判断には喝采を送りたい。以降もハッとさせるような楽譜にない弱音や見得を切るようなルバートとやりたい放題。指揮者の「こんな風に演奏してみたい」という表現欲がこぼれ落ちそうな演奏だ。第二楽章も同様の演奏。とにかくメリハリが効いていてオーケストラをぐいぐい引っ張っていく指揮者と、それに面白がってついていくオーケストラのやりとりがスリリングだ。第三楽章もテンポの変化が激しいが、曲想に合っていてマーラーが指揮してもこんな感じだったのではないかと感じさせる。特に軍楽隊のテーマの出てくる部分でかなり早めのテンポを取っているのがいい。インバルや山田一雄もこの部分はかなり早く演奏していた記憶があるが、これくらいが適当と感じる。変幻自在な変化球を投げた第三楽章までと違って、終楽章は直球勝負。真正面からオーケストラをガンガン鳴らす。これはこれでいいのだが、やはり大音量が飽和状態になってしまう。昔より遙かに良くなったとは言え、サントリーホールの音響は大編成のオーケストラ向きではないので仕方ない部分はあるが、在京オケなのだからホールの特性は知り尽くしているはずだ。バッティストーニが振るとオーケストラもついつい音を出しすぎてしまうのだろうか。コーダのホルンは楽譜の注記通りトランペットとトロンボーン各一本とアシスタント一本を含むホルン八本が立奏したが、他の楽器が鳴りすぎていて効果が薄い気がした。もっとも、ここを含む再強奏全般でバランスが悪いのは、指揮者の若さ故ということで好意的に受け止めたいと思う。一番最後でテンポを煽る所などは往年のスウィトナー指揮N響の名演を彷彿とさせる、ライヴならではの演奏と言えるだろう。

 バッティストーニの指揮は相変わらずクネクネと万歳とジャンプという感じの酷い棒だが、全身から表現欲が発散されており素晴らしい。まだ二十代後半なんだからやりたいことを思ったとおりやるのがよい。時にはオーケストラから拒否されたり喧嘩になったりするかも知れないが、東フィルのように面白がってついてくるオケに巡り会えればこのような名演が生まれるのだ。器用な棒で交通整理するばかりで、何をしたいのかサッパリ判らない日本の若手指揮者は見習うべきだ。我々聴衆は指揮者のバトンテクニックを鑑賞に来たのではない。感動出来る音楽を聴きたいのだ。
 今後バッティストーニが定期的に東フィルに客演してくれることを望む。さらに贅沢を言えば、日本の他のオケにも客演して、例えばN響を振るとどんな演奏になるのか聴いてみたいものだ。

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