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2014年3月 2日 (日)

伊豆諸島航路の新造船ラッシュ

 私が大好きな伊豆諸島航路が、今年は俄に新造船ラッシュとなっている。単なる老朽化した船舶の入れ替えに留まらず、運行体系が変わる航路もあるので目が離せない。

 あおがしま丸(伊豆諸島開発 貨客船)

 八丈島~青ヶ島航路では伊豆諸島開発の還住丸(一一九噸、一九九二年横浜ヨット建造)と黒潮丸(四四〇噸、一九八八年日立造船向島マリン建造)が退役し、今年の正月から新造貨客船あおがしま丸(四九九噸、三菱重工下関建造)が就航した。巡航速度一七、五ノット、定員五〇名、コンテナ三十八個積載という仕様で、八丈島~青ヶ島間を日曜以外毎日往復していた還住丸と東京~青ヶ島間を週一往復していた黒潮丸の機能を集約した運行時刻となる。毎週月曜日、土曜日と第一第三水曜日、第二第四火曜日が10時20分八丈島発、毎週金曜日が東京発便で八丈島8時30分発。前の晩に東京を出港するが東京~八丈島間は貨物のみの運行で旅客扱いはしない。運行が曜日固定にならないのは、船員の休暇を日曜日と第一第三火曜日として、隔週で週休二日にするということだろうか。だったら毎週月火土運航にして、完全週休二日すればいいと思うが、欠航無しでも水木は二日続けては船が来ない(東京に行っている)というのに抵抗があるのだろうか。いずれにしても判りにくい運航時刻だ。
 八丈島の入港地が八重根漁港固定だった還住丸の時と違い、底土港を基本とした東海汽船の入港地と同じになるので、乗り継ぎ客には便利になる。出来ることならば運航日を毎週月火土10時20分、金曜8時30分八丈島発にして、木曜夕方の東京発便及び水曜八丈島発便に通し(東京~青ヶ島)で乗船する客のみ東京~八丈島間も乗船可能にしてくれれば有り難い。供食設備などが無いが、事前に注意喚起すれば飲料の自販機だけで大丈夫だろう。東京から乗り込んで、青ヶ島目前まで行って接岸出来ず引き返しなんて、考えただけで痺れてしまう。

 橘丸(東海汽船 貨客船)

 東海汽船では貨客船かめりあ丸(三八三七噸、一九八六年内海造船瀬戸田建造)の代替船として橘丸(五七〇〇噸、三菱重工下関建造)が就航する。これにより基本的な配船は片航路(東京~大島~利島~新島~式根島~神津島)と夏の東京湾納涼船にさるびあ丸(四九九二噸、一九九二年三菱重工下関建造)、三八航路(東京~三宅島~御蔵島~八丈島)に橘丸という配置が基本となるようだ。
 橘丸の就航で画期的なのは、貨客船二隻の速度が揃うことだ。従来の船隊だとさるびあ丸の巡航速度約二〇ノットに対し、かめりあ丸は十七、五ノットとかなり鈍足だった。そのためドック時期や納涼船運航期間に三八航路に配船されるかめりあ丸の為に、運行時刻は余裕を持って組まれていた。それでもかめりあ丸就航時は東京着が二十分繰り下げられていた。橘丸は巡航速度十九ノットなので、ドック時期にさるびあ丸が代走しても同じダイヤが維持出来る。そのために上り便の大島寄港が実現することになった。三八航路の上り大島寄港は、俊足だったすとれちあ丸(一九七八~二〇〇二年)就航時代に夏のみ行っていた時期があった。手元に一九八七年夏の時刻表があるが、大島着15時40分で、大島発16時10分発の稲取経由伊東行き高速船シーホーク2、及び16時20分発の熱海行き高速船シーガルに接続していた。現在はジェットフォイルが就航しているので、当然橘丸から大島乗り換えで東京、熱海行きのジェットフォイルに接続することになるだろう。在来船での大島~東京の約四時間という所要時間は、往きの夜行便では気にならないが帰りでは長い。そこで、片航路も三八航路も大島でジェットフォイルに乗り換えれば東京まで一時間四十五分、熱海までなら四十五分だ。利島、三宅島以遠からの乗客にとっては有り難い改善であるし、熱海に上陸する選択肢が出来ることにより、静岡、神奈川方面へ向かう乗客にとっては大幅な時間短縮及びショートカットになるので、新たな輸送需要を喚起出来る可能性もあると思われる。

 あぜりあ丸の後継船(神新汽船 カーフェリー?)

 下田~利島~新島~式根島~神津島~下田(曜日により逆回り)航路を運航している神新汽船では貨客船あぜりあ丸(四八〇噸、一九八八年三菱重工下関建造)の後継船が十二月頃就航する。まだ正式な発表はされていないようだが、この航路の後継船問題については大きく三つの案があった。

A特急接続案 船足を速くして下田帰着を早くし、下田16時05分発の特急踊り子に接続する案
B大島寄港案 大島寄港を追加し、航路を下田~大島~利島~新島~式根島~神津島~下田(曜日により逆回り)とする案
C大島伊東案 起点港を下田と伊東を交互にして、大島寄港を追加し、航路を伊東~大島~利島~新島~式根島~神津島~下田(曜日により逆回り)とする案

 A案は現ダイヤでも土日祝日は臨時踊り子(17時10分発)に間に合うので、平日のみの効果しかない。C案は欠航すると翌日の便も運航出来ないという大問題が解決出来ない。私は個人的に、船足を十九ノット程度まで上げてB案を採用し、大島でジェットフォイルとの接続をはかればよいと思っていた。しかし聞いたところによると、大島に寄港すると補助航路の条件から外れてしまうそうで、補助金漬け体質の神新汽船には無理な話である。
 そして最近になって耳にした情報によれば、航路自体は従来通りだが、新造船は大型化して快適性を高め、RORO船(ロール・オン・ロール・オフ、車輌がランプウェイを自走して荷役が出来る構造の船)とするようだ。従来のあぜりあ丸は昔ながらの貨客船で荷役はデリック(クレーン)のみ。スラスターやスタビライザーなどの小賢しい機能が無いのが魅力だったが、今度は一気に伊豆諸島航路初のカーフェリー就航ということになるようだ。とは言え、伊豆諸島の港湾事情は外洋に突き出した桟橋に接岸する島ばかりだから、通常のカーフェリーとは事情が違う。従来の貨客船同様、船首側に船倉とクレーン(デリック)を装備し、波のある時はクレーンでコンテナを積み卸しし、凪の時は船尾のランプウェイからフォークリフトが直接出入りしてコンテナを積み卸しする形のようだ。つまり、相変わらず荷役の中心はコンテナだが、状況が良ければROROで荷役が出来、車輌航送も可能な貨客船ということになる。ここまで書けば船オタならピンと来るはず。そう、トカラ列島航路に就航しているフェリーとしまとそっくりな船になりそうなのである。
 正直なところカーフェリー化と聞いた当初は、あんな狭い島にカーフェリーを入れることはないと考えたが、観光客の車輌航送よりは荷役の効率化が主目的であるようなので、これはやってみる価値があると思う。これが上手く行くようならば、もう数年先には考えなければいけないさるびあ丸の後継船もこのタイプの船になることだってあり得ると思う。蓋を開けてみたら、RORO方式で荷役作業が大幅に効率化されるのか、はたまた現実には殆どRORO方式は使えずランプウェイは無用の長物になるのか。実際の運用が楽しみな下田航路である。

 ジェットフォイルの入替

 東海汽船では二〇〇三年からジェットフォイルの運用を始めている。ジェットフォイルとはボーイング社が開発した水中翼船で、本家ボーイング社が一九七四~一九八五年に二十八隻、ライセンスを受け継いだ川崎重工が一九八八~一九九四年に十五隻、合計四十三隻が製造された。東海汽船が当初購入したのは次の三隻である。

・セブンアイランド愛(ボーイング十七番艇、一九八〇年製)
・セブンアイランド夢(ボーイング十九番艇、一九八一年製)
・セブンアイランド虹(ボーイング二十番艇、一九八一年製)

 いずれも購入時船齢二十年以上で、東海汽船は自社に整備部門を設けたが、故障の多さに泣かされている。また、二〇〇七年五月十九日にはセブンアイランド愛が波に突っ込み、一階前面の窓が割れて浸水するという大きな事故を起こし、三隻とも一階席前面の窓を鉄板で塞ぐ改造を施されたりした。機関故障も多く、数年前には動けなくなったジェットフォイルの代わりに下田のあぜりあ丸が熱海~大島航路の応援に就いた事などもあった。それに懲りたのか、東海汽船は二〇一三年四月にジェットフォイルをもう一隻購入して四隻態勢となった。

・セブンアイランド友(川崎重工二番艇、一九八九年製)

 最初の三隻よりは八~九年新しい(とは言っても購入時点で船齢二十四年)の船体である。これで繁忙期は四隻態勢で余裕を持った運航、通常期間は三隻態勢プラス予備船で、故障等に対応出来るようになった。十年目にしてようやくという感じだ。
 ところが、更にもう一隻ジェットフォイルを購入することが、二月十三日付で発表された。福岡~釜山航路を運航するJR九州高速船から一隻譲受して、二〇一五年二月に就航させるというのだ。古い三隻のうち、余程調子の悪い船体があるということだろうか。JR九州高速船は現在四隻のジェットフォイルを所有しており、全て川崎重工製で三、五、八、十四番艇(一九八九~一九九四製)である。福岡~釜山航路のダイヤを見ると、繁忙期でも日本側三隻、韓国側二隻の五隻で、通常期は日本側二隻、韓国側一隻の三隻態勢なので四隻所有する必要は無いということだろう。JR九州高速船が一隻余っており、東海汽船側が状態のいいものを一隻欲しいという利害関係が一致したのだからめでたいことだ。しかし、間違いなく言えるのは、福岡からやってくるのは四隻の内で一番状態の悪い船体であり、船齢二十年以上であるということだ。ジェットフォイルが一九九五年以来製造されない理由は知らないが、新造されない以上はジェットフォイル以降の航路展開についてそろそろ考えなければならないだろう。当面はジェットフォイル四隻体制で推移するものと思われるが、ジェットフォイルの命脈が尽きた時どうするのか。真剣に考えないと、意外に早くその時はやってくるような気がする。

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