フェリーなみのうえ
フェリーなみのうえ(カーフェリー 六五八六総噸)
マルエーフェリー
一九九四年六月 林兼船渠で建造
一九九四~二〇一二年 鹿児島~沖縄航路に就航
三月十六日に韓国のカーフェリー、セウォル号が沈没する事故が起こった。未だ数百人の乗客の安否が不明という憂うべき状態が続いているようだ。不明者の多くが修学旅行中の高校生ということで、紫雲丸事故を思い起こさせる痛ましい事故である。
報道されている通り、このセウォル号は元マルエーフェリーのフェリーなみのうえある。私は沖縄に二回行ったことがあり、一回目は往路がフェリーなみのうえで、復路がありあけ、二回目は往路がありあけで、復路は飛行機。マルエーフェリーの船にはこの三回しか乗ったことがないのだが、その二隻とも後に大きな事故を起こしたのは何とも嫌な気持ちになる。
船ヲタの目で見るとこの事故は、第一の原因が急激な右旋回、第二の原因が荷崩れ。これに尽きると思う。尋常でない急な右旋回という操船をしたために、ラッシング(積み荷の固定)が甘かった車輌甲板の積み荷が偏り、バランスを失ったということだろう。事故発生後の対応について様々な批判がされている事については船ヲタの領分ではない。しかし、操船していたのが経験の浅い三等航海士だったことが批判されているのはおかしいと思う。
恐らくこのことを批判している人々は、船というものは制服制帽の船長が操舵室で双眼鏡を手に仁王立ちして、「面舵イッパーイ!」などと号令すると、操舵手が巨大な舵輪をグルグル回して操船していると思っているのだろう。日本人は未だに丁髷と刀で歩いている位の時代錯誤な認識である。今時の船は殆ど自動操縦で、操船も最新船ならジョイスティックだ。狭い港での離着岸などは難しい操船かも知れないが、沖合いの航行は自動操縦やGPSで看視されているはずだ。
今回の急旋回は居眠りしていて岩礁や陸地に近づきすぎたわけではないようなので、船の進行方向に何かが突然現れたのを発見して、それを避けようとしたのではないだろうか。では、一体何が現れたのか。それはどこかの国の潜水艦だったかも知れないし、操舵手だけにしか見えない海坊主の類だったのかも知れない。それは今後の捜査で判明するだろうと思う。
最初に衝撃音がしたという証言もあるようだが、船が何かに衝突したのか、荷崩れの音だったのかは定かでない。映像で見る限り沈没直前のバルバスバウ(球状船首、舳先の水面下の部分)に、大きな傷や変形は見られなかったので、正面衝突はしていないという事以外は判らない。
また、この船が日本製であり、長く日本で運航されていたことも話題になっているが、元の船主に取材するのも馬鹿げている。売却後旅客の居住区を増築する改造をされている船について元の船主や造船会社(吸収され会社としては消滅している)が何か言えるはずがない。取材されるべきは改造した現船主と施工会社であろう。少なくとも、運航国の関連法令に適合していなければ旅客営業は出来ないはずだから、改造が事故原因ではない。あくまで直接の原因は、操船と荷物固定の不備に問題があったはずだ。
今後の報道に注目していきたいと思う。
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コメント
>少なくとも、運航国の関連法令に適合していなければ旅客営業は出来ないはずだから、改造が事故原因ではない。
その国の関連法規がしっかりしているとは限りません。
先進国ならともかく、韓国ですよ。
投稿: | 2014年7月26日 (土) 21時33分