ノットの千人
ミューザ川崎シンフォニーホール開館一〇周年記念コンサート
独唱/(ソプラノ)エリン・ウォール、メラニー・ディーナー、アニカ・ゲルハルズ、
(アルト)イヴォンヌ・ネーフ、ゲルヒルト・ロンベルガー、
(テノール)ニコライ・シューコフ、(バリトン)デトレフ・ロス、(バス)リアン・リ
合唱/東響コーラス(合唱指揮/冨平恭平)、東京少年少女合唱隊(合唱指揮/長谷川久恵)
管絃楽/東京交響楽団
指揮/ジョナサン・ノット
マーラー/交響曲第八番変ホ長調
二〇一四年一二月七日(日) ミューザ川崎シンフォニーホール
ミューザ川崎は開館記念演奏会と開館五周年記念演奏会で千人を取り上げており、開館十周年の今年は新音楽監督のジョナサン・ノットの指揮で千人を上演する。
東響を聴くことが滅多に無いのだが、前回の五周年の時と同様で対向配置だ。対向配置の特徴として舞台上手に空間が空くので、ハープ四台、マンドリン二人、ピアノ、チェレスタ、ハーモニウムと打楽器がひと塊になって控えていると、あの一角が突然「もっと出番をよこせ-!」とか言って反乱を起こしそうな気がして楽しくなる。
ノットの指揮は今時のマーラー。ポルタメントは無視、場面場面でテンポは結構変えるがルバートは少なめで、かなりあっさりした演奏だ。東響コーラスの合唱が大変レヴェルが高く安心して聴いていられるのだが、第二部の歌い始めや神秘の合唱など、ピアニシモ指定の部分でもメゾピアノ程度で唱わせる。安定感を重視するとそうなるのかも知れないが、音楽に緊張感が無い。全員外国勢の独唱者は、結構ハラハラする所が見られたが致命的な落っこちなどは無く、バランスの取れたアンサンブルだった。珍しかったのは第二部大詰めの「全て移ろいゆくものは」の合唱(一五〇六小節)直前の第二合唱団の女声にだけ付いているスラーをきちんと唱わせていたこと。ここを楽譜通りやったのは、他に広上淳一しか記憶に無い。広上はわざと他のパートを早めに切って目立たせていたが、ノットはあっさりやっていた。金管のバンダは舞台左右の三階席に配置。五周年の時にオルガンの前にバンダを並べ、音響的な効果をゼロにした飯森ほどひどくはないが、やはりバンダはオケと向かい合う位置に配置しないとマーラーの狙った効果が出ないだろう。
東響は歴代の指揮者が興味の湧かない指揮者ばかりだったので、今まであまり聴く機会がなかったが、新監督がノットになって更に縁遠くなりそうだ。
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