山田和樹マーラー・ツィクルス《第1期》
主催/Bunkamuraオーチャードホール
【第一回】
二〇一五年一月二十四日(土)オーチャードホール
山田和樹と日本フィルによるマーラーツィクルスが始まった。二年半かけて全九回の長丁場だが、思い切って通し券を購入して全部聞くことにした。
番号順に演奏するツィクルスなので先ずは第一番。何故ハンブルク稿という大きな疑問が立ちふさがる。ハンブルク稿の説明は省くが、推敲途中の版を使用する意図は何か。ツィクルスで交響曲を順に取り上げるなら最終稿である全集版を使うべきだと思う。ハンブルク稿は比較対象として研究用には大変興味深いが、正直生演奏で聞きたいとは思わない。山田は小林研一郎の弟子だけあって、版の問題や奏法の問題で理屈を並べるタイプではなく、演奏家として表現に重点を置くタイプと思っていたのだが。通常と違う版による演奏となると、どうしてもオーケストレーションの違いばかりが気になってしまう。私は山田がマーラーをどう料理するかが聴きたかったのであり、その為にハンブルク稿は邪魔でしかない。そしてハンブルク稿を検証する意図であるなら、ホルンを倍管にしたりするのは頓珍漢な話だ。高関健のような学究派の指揮者が検証してくれるならそれで面白いのだろうが、どちらかと言えばコバケン系の情緒派指揮者である山田とハンブルク稿は相性が悪いと感じるのである。
武満徹/混声合唱のための「うた」より
マーラー/交響曲第二番ハ短調「復活」
ソプラノ/林正子 アルト/清水華澄
合唱/東京混声合唱団(合唱指揮/山田茂)
武蔵野合唱団(合唱指揮/秋吉邦子)
二〇一五年二月二十二日(日)オーチャードホール
版の問題で山田が何をしたいのか判らなくなってしまった一番に比べ、二番は安心の出来であった。第一楽章冒頭から大きく間合いを取った曲作りは期待通りだ。近頃は楽譜に無い間合いや撓め、テンポ、強弱のの変化などを罪悪だと言う、自己否定的発言をする演奏家もいるが、山田はそんな戯言は薬にもせず自分の思った音楽を作っていく。楽譜なんて芝居の台本と同じ程度の記号でしかないのだから、表情を付けてテンポを変えてナンボのもの。楽譜通りの演奏なんて、臆病者の言い訳に過ぎない(武田鉄矢かよ!)。
武満徹/三つの映画音楽
マーラー/交響曲第三番ニ短調
アルト/山下牧子
合唱/栗友会合唱団(合唱指揮/)
杉並児童合唱団(合唱指揮/)
二〇一五年二月二十八日(土)オーチャードホール
百人を超える生身の人間が演奏しているのだからミスがゼロと言うことはあり得ない。しかし、プロとしてやってはいけないミスがあることも事実だ。全体的に見ればよく歌わせた三番だったが、最後の最後で全員がずっこける大チョンボ。ティンパニの最後の音が合わず、「デデン」と綺麗に二つ鳴って終わった。出囃子じゃないんだからデデンで終わるなよ。指揮者がリハーサルよりもルバートしたのかも知れない。それにしたってティンパニ奏者同士がちゃんとコンタクトして、棒とは合わなくてもティンパニ同士は合わせるのがプロだろう。これに比べれば第四楽章冒頭のチューブラーベルが落っこちたのなど可愛い方だ(とは言っても大事故である)が、これとて奏者が合唱団と一緒にのんびり立ち上がっているから間に合わなかったわけで、確かに山田は合唱団が立ち上がった瞬間にアインザッツを出したが、児童合唱はちゃんと唱えていたのだから、プロとしてやってはいけない凡ミスだ。
山田のマーラーツィクルスはこれで第一期が終わり、次は一年後だ。明らかにCD収録用と思われるマイク群がセットされているが、ここまでの内容だと音源として市販するには色々な意味でまだまだな感じがする。それにしても、毎回マーラーの前に妙な音楽を聴かされるのは苦痛。短い一、四、五番あたりは仕方ないが、それ以外の曲はマーラーだけ演奏してくれないものだろうか。


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