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2016年5月 9日 (月)

リンクの千人

NPO法人おんがくの共同作業場設立15周年記念?音楽復興支援公演?マーラー『千人の交響曲』

マーラー/交響曲第八番変ホ長調

独 唱/國光ともこ、朴瑛実、見角悠代(ソプラノ)、増田弥生、清水華澄(アルト)、
    望月哲也(テノール)、大井哲也(バリトン)、青山貴(バス)
合 唱/新星合唱団、東京オラ トリオ研究会、東京ライエンコーア、小平コーラス・アカデミー、
    立川コーラス・アカデミー(指導/郡司博、渡部智也、内藤裕史)
    FCT郡山少年少女合唱団 (特別出演、指導/渡部昌之)、
    多摩グリーンロタキッド・クラブ(指導/鈴木直人)、
    オーケストラとうたう杜の歌・こども合唱団(指導/津上佳子)、
    三鷹中央学園三鷹市立第三小学校合唱団 (指導/小林荘子)
管絃楽/ブルーメン・フィルハーモニー
指 揮/ジェフリー・リンク

二〇一六年五月五日(木祝) 東京芸術劇場

 NPO法人おんがくの共同作業場は合唱指揮界の重鎮、郡司博が指導するアマチュア合唱団をまとめて制作面の面倒を見ている団体だ。アマチュア音楽団体共通の悩みである裏方不足を解消する、複数の団体が共同で制作部門を持つという画期的な方法で、今年で創立十五年とのこと。その記念演奏会を聴く。

 まず千人をやる上で気になるのは編成の大きさ。オーケストラは十四型で、管楽器などは最小編成(ハープ二、マンドリン一)、ティンパニは一対、ハーモニウムは電子楽器。合唱はおおよそ混声二百、児童七十名。千人の上演規模としては小さめで、芸劇の舞台とバルコニーA列を一杯にして張出舞台は組まずに舞台に乗せきった。独唱者は指揮者の左右、第三ソプラノはオルガンバルコニーに、金管のバンダは三階席上下の通路に配置されていた。

 演奏は大人の千人という印象。どうしてもアマチュアの千人というとエキサイティングな演奏を想像してしまうが、合唱もオーケストラも温度は上がっても決して叫んだり怒鳴ったりにはならず、踏み外しのないものだった。リンクの指揮は全体的に速めのテンポで進んでいくが、テンポの動きやルバートは随所に見られた。基本的な流れや決め所の感じはインバルに近いのだが、同じような音楽作りでもインバルに感じた厳しさのようなもの(デュトワはもっと厳しい感じがした)が感じられず、常に穏やかな雰囲気であり、オーケストラも合唱も楽しんで演奏している印象であった。また、独唱陣は全員が音域的に苦しかったり、音量的にかき消されがちだったりという場面はあったが、突出した人のいないバランスの取れたアンサンブルであった。これはオーケストラの編成が小さめで、指揮者がバランスに気を配っていた結果かも知れない。オーケストラはアマチュアらしい金管楽器の裏返りや、シンバルの打ち損ないなどはあったが、決して事故というレヴェルではなく、リンクの丁寧な棒の下落ち着いた演奏を繰り広げていた。

 派手さの無い演奏だったので、客席も千人にしては大人しい反応だったが、私にとっては満足度の高い演奏だった。一九九〇年代位までは、取り上げるだけで事件だった千人。当然演奏はエキサイティングで、客席は興奮の坩堝というのが普通だった。それに比べると上演機会もずっと増えて、普通の演目になった千人を様々なアプローチで聴けるのは嬉しいことだ。欲を言えばアマチュアらしい踏み外しがあってもよかったが、今や合唱指揮界の大御所となった郡司にそれを求めるのは筋違いだろう。

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