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2018年9月30日 (日)

びわ湖ホール開館二〇周年記念演奏会(振替公演)

びわ湖ホール開館二〇周年記念演奏会(振替公演)

マーラー/交響曲第八番変ホ長調

独唱/横山恵子、砂川涼子、幸田浩子(Sop.)、谷口睦美、竹本節子(Alt.)、
   清水徹太郎(Ten.)、黒田博(Bar.)、伊藤貴之(Bas.)
合唱/びわ湖ホール声楽アンサンブル、千人の交響曲」合唱団(合唱指揮:田中信昭)
児童合唱/、大津児童合唱団
管絃楽/京都市交響楽団
指揮/沼尻竜典

二〇一八年九月二十九日 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール

 びわ湖ホールの開館二十周年記念演奏会は九月三十日(日)に行われる予定だったが、大型で非常に強い勢力の台風二十四号が直撃する予想となった。二十八日(金)の段階でびわ湖ホールの告知は。「三十日は予定通り十四時開演の方針だが、二十九日(土)十六時からに緊急臨時公演を行う」というもの。チケットを持っている人は両公演とも聴ける。前回の二十一号台風でJR西日本はあっさり全便運休を決め、世論調査でも好評だったので、今回も運休しそうだ。こうなったら二十九日に行くしかない。仕事中にこっそり高速バスを予約して大津へ向かう。昼過ぎにJR西日本より三十日午後の全便運休が発表され、会場に入ると三十日の公演中止が告知されていた。

 前売りは完売だったらしいが、急な日程変更のため入りは半分程度。びわ湖ホールにとって運が良かったのは京響が去年の三月にマラ八を上演していたことだろう。下地があったから練習が一日減っても上演出来たのではないだろうか。勿論全ての出演者、関係者の、想像も付かない大変な努力によって、完全な中止ではなく前日に振り替えるということが出来たのだと思う。私は昔、音楽制作関係にちょっとだけ関わったことがあるので、この規模の演奏会の日程を替えると云うことの大変さが想像出来る。本当に頭の下がる思いだ。

 それはさておき、演奏内容だが、独唱陣の健闘が素晴らしかった。特に第一アルトと男声陣が良かった。アルトの谷口睦美の声量は驚くほどで、他の六人とのバランスは悪いが、往年の佐藤しのぶと並べても引けをとらない声量だ。合唱も御大田中信昭の指導の賜か、児童合唱を含めレヴェルが高かった。混声合唱約二百、児童合唱約五十と人数が少なかったので、ここ一番でもう少し迫力が欲しいと思ったのは贅沢か。

 以下、毎度のメモ。絃は十六型。ハープ二、マンドリン一、ピッコロと小クラリネット各二、ティンパニは二対で両手打ちは無し。チューブラーベルではなく鉄板使用。児童合唱は合唱壇の下手側、金管バンダは三階下手、栄光の聖母は三階上手。
 沼尻の指揮は予想通りそつないものだった。今までのイメージ通り、速めのテンポでスラスラ進めていき、表現欲が全く感じられない交通整理的な棒だ。と云うものの、この公演の指揮者が沼尻だったからこそ、前日に振り替えるというウルトラCが可能だったのだと思う。往年のヤマカズ先生だったら途中で間違いなく崩壊していただろうし、アサヒナ御大だったらそもそも振替公演を是としないだろう。小器用でそつがない指揮者だったからこそ何とか上演に漕ぎ着けたのだ。
 貴重なマラ八の生演奏を聴く機会が一回失われずに済んだ。関係者の努力に改めて感謝したい。そしてJRの運休が三十日の十七時過ぎまで続いて、私の手元にある「ぷらっとこだま乗車票」が無事払い戻しになることを祈るばかりだ。

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2018年9月23日 (日)

成田山久留米分院

成田山久留米分院

救世慈母大観音(一九八二年建立、六十二メートル)

 北九州で半日暇と云うことになると、まず押さえたいのはここであろう。西鉄の高架からも見える巨大仏、成田山久留米分院の救世慈母大観音を御参りしてきた。石段を登ると、本堂の左奥が拝観料五百円がかかるエリア。この中に、救世慈母大観音、インド村・平和大仏塔極楽殿、歴史館、地獄館がある。
 先ずはインド村・平和大仏塔極楽殿。高さ三十八メートルの仏塔で、ブッダガヤ大仏塔のコピー。有名な建築物のコピーを建てるというのは、生口島の耕三寺みたいで香ばしい。中には金ピカでインドっぽい釈尊像や様々な仏画などがあるが、目を引いたのは「日本一鑿子」という仏壇のおりんの化け物。直径一メートルくらいだろうか。叩いてみると鐘というよりは銅鑼のような音がした。
 続いて五百(はないと思う)羅漢像を見ながら救世慈母大観音、台座の後ろ側に体内巡りの入口がある。高さ六十二メートルの首のあたりまで階段で登れる。内部は蒸し暑くて殺風景。所々に景色を眺められる小窓が付いている。台座部分や階段の所々に人形や絵があるが、もう少し見せ場があってもいいと思う。東京湾観音みたいに外に出られる展望台でもあると素晴らしいのだが。
 大観音の足元から怪しい地下通路に順路は続いており、その途中に何故か「孝子の像」がある。これは「一日一善爺さん」として知られる笹川良一が老母を背負って金比羅様の階段を登ったという有名な美談を銅像にしたもので、確か船の科学館や日本船舶振興会にあるものだと思う。何故そのレプリカがこんな薄暗い地下通路に置かれているのか。何の説明もないので全く判らない。
 地下通路を抜けると歴史館。歴史上の人物像を天然の宝石で作ったものが沢山並んでいる。甲府の宝石庭園と蒲郡の貝殻館(竹島ファンタジー館)の折衷みたいなもので、その他に関係ない骨董品なども並んでいるところが香ばしい。
 そして最後は地獄館。お馴染みの地獄の様々なシーンが電動の人形と怪しい照明で再現されている。人形の表情などとてもよく出来ている上に状態も良く、徳島の正観寺八大地獄より規模は小さいが、大変に見応えがある。特に責められている人間の苦悶の表情が素晴らしい。

 残念ながらこれらのアトラクション、もとい宗教施設は、内部は撮影禁止のためここに画像を示すことは出来ない。しかし、ネット上には結構動画なども上がっているようなので、興味のある方は是非見てみてほしい。久留米近辺まで行ったなら、バスに乗って行くだけの価値は十分にあるスポットである。

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フェリーしまんと

フェリーしまんと(二〇一六佐伯重工業/オーシャントランス)

一二、六三六総噸 全長一九一メートル、全幅二七メートル
航海速力二二、四ノット
旅客定員二五二名 積載トラック一八八、乗用八〇台

 九州へ行くのに往路は船で行ってみた。オーシャン東九フェリーは大分以前和歌山へ行くのに徳島まで「おーしゃんいーすと」に乗船したことがあるが、二年前に四隻の船舶を総入れ替えして、全てシンプルフェリーと称する、設備を最少限に抑えた船になったので、どんな感じか確かめてみたかったのだ。
 国際展示場駅前から送迎ワゴン車に乗ってフェリーターミナルに着くと、徒歩乗船は十名程度。船内に入るとマイカー組は結構いるようだ。客室はワンフロアのみで、案内所兼売店、自動販売機食堂、大画面テレビのリラックス室、船橋下の展望室、男女浴室、ゲーム室。
 室外に出られる甲板は屋上の一部分と、右舷側の通路だけ。自殺と事故を防止するためと云うことで、忍び返しのように上部が内側に曲がった高いフェンスに囲まれている上、船縁まで距離があるところに設置されているため、接岸離岸作業などがよく見えない。更にベンチはおろか、吸排気口類も全てフェンスの外にあるので、甲板で海を眺めるのに座ることが出来ないである。これは全く面白くない。
 食堂は自販機と電子レンジがずらりと並んでおり最長で二泊程度の航路ならばまあ我慢が出来る内容。インスタント味噌汁やレトルトスープがあるのは有り難い。味噌汁代わりにカップラーメンを食わずに済む。缶ビールは三五〇缶が二五〇円、五〇〇缶が三五〇円。普通よりやや高いが仕方ないだろう。運転免許証を持たずに来たので、酒の自販機が東海汽船方式の免許証が要るタイプだったらどうしようと心配したが、深夜以外は自由に変えるタイプだったので良かった。
 私は船に乗ったら甲板でずっと景色を眺めていたい口なのだが、この船ではどうにもならない。炎天下に一日突っ立っていたら人間の丸干しが出来上がりそうなので、ほぼ展望室で一日過ごし、温泉でもない風呂に一日四回も入ってしまった。展望室も船縁と同じレヴェルなので景色が見えづらいため、結局スマホで銭形平次捕物控なぞを読むか、MP3プレイヤーでラジオの録音を聴くしかすることがない。甲板で過ごせないというのは、こうも詰まらないものかとガッカリした。
 とは言え貴重な東京発四国、九州行きのフェリーが新造船を揃えてくれたのは有り難い。シンプルフェリーにしたと云うことは輸送体制を貨主客従にシフトしたと云うことだろう。客はついでに乗せているのだから、貨物輸送が途絶えない限り航路が廃止になったりはしないだろう。細々とでいいから存続してほしい航路だ。
 以前乗った時は、徳島で南海フェリーに乗り換えたのだが、南海フェリーの埠頭が徳島港の反対岸だったので、タクシーで末広大橋を渡って乗り継いだが、現在は東九フェリーの埠頭が南海の並びに移転したので、距離は一キロ強あるが徒歩で乗り換えられるようになったのも有り難い。九州までだとさすがに退屈するが、四国、和歌山方面に行く場合の選択肢として忘れないようにしたいと思う。

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九州交響楽団第三七〇回定期演奏会

九州交響楽団第三七〇回定期演奏会

マーラー/交響曲第八番変ホ長調

独唱/並河寿美、大隅智佳子、吉原圭子(Sop.)、加納悦子、池田香織(Alt.)、
   望月哲也(Ten.)、小森輝彦(Bar.)、久保和範(Bas.)
合唱/九響合唱団、九州大学男声合唱団コールアカデミーほか
児童合唱/NHK福岡児童合唱団MIRAI、久留米児童合唱団、筑紫女学園中学校音楽部
合唱指揮/横田諭
管絃楽/九州交響楽団
指揮/小泉和裕

二〇一八年九月二二日 アクロス福岡シンフォニーホール

 やはり格が違う。九響は決して一流のオケとは言えないが、やはりアマオケや音大オケとは違う安心感があり、小泉和裕のどっしりした音楽作りと相まって、安心して聴ける。混声合唱はオール福岡的な寄せ集めだが、それを感じさせない纏まりの良さは特筆に値する。おそらく全体を纏める合唱指揮者が相当入念な練習を重ねたのだろう。N児福岡を中心の児童合唱も高いレヴェルだった。
 小泉は基本的に奇をてらうようなことはしないが、ここ一番で見せる思い切ったためや、極端にではなくぐっとテンポを落としてじっくり聴かせる部分など、いぶし銀の棒だ。第一部の最後、金管バンダが入る部分でテンポを上げて台無しにする浅はかな指揮者が多いが、小泉はテンポを落として始まり、合唱や金管の上行音階をしっかり聴かせつつ徐々にテンポを上げていくという、思わず「その手があったか!」と唸ってしまう処理を、ごくごく自然に行っていた。ここだけ聴いても凡百の指揮者とは次元が違うのだが、それを派手に見せるのではなく、当たり前のようにやってしまうところが凄い。
 以下、気づいた点を列挙する。絃は一六型、ピッコロ二、ホルン九、ハープ二、マンドリン一。金管バンダは上手側三階バルコニー席、栄光の聖母は三階席正面(多分)。独唱はオケと合唱の間。アクロス福岡は張出を使うとかなり舞台が広く、巨大な合唱台を組んでも舞台上に余裕があった。
 ティンパニは四台二組。第一部のzu2は両手打ち、第二部は片手打ち。チューブラーベルではなく鉄板を使用。シンバルの扱いが面白く、第一部の再現部手前(二人または三人同時打ち)は吊りシンバルを使わず合わせシンバル二人、再現部冒頭は合わせシンバル三人。第二部頭の合わせシンバルのピアニシモは、片方の縁でもう片方を擦り上げる奏法を使わず、大きなシンバルをそっと合わせていた。
 声楽陣はバランスが悪かった。特に第一ソプラノとテノールが不安定。テノールは縮緬ヴィブラートで自己陶酔的な唱い方が耳障りだった。第一ソプラノは途中までは良かったのだが、神秘の合唱のハイCをまさかの大絶叫して、まさかの息継ぎ。この曲の場合ソプラノとテノールは音域的に苦しいならオファーがあっても引き受けてはいけない。その一方で第二ソプラノが素晴らしく、第二部の罪を悔いる女のソロは鳥肌が立った。

 小泉和裕という指揮者は抜群の安定感だけではなく、それ以上の何かを持っている人だと感じる。それが派手なパフォーマンスや、太い政治力などならば一枚看板になるのだろうが、ピッチャーで言うと中継ぎのエースという感じだろうか。東京では都響にポストがあるが、なかなか聴く機会がない。レパートリーが渋くて私の好きな曲とかぶらないせいもあるが、もっと聴きたい指揮者だ。来月の名フィルが待ち遠しく感じる。

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2018年9月17日 (月)

東京ユヴェントス・フィルハーモニー創立一〇周年記念演奏会

東京ユヴェントス・フィルハーモニー創立一〇周年記念演奏会

マーラー/交響曲第八番変ホ長調

独唱/森谷真理、中江早紀、中山美紀(Sop.)、谷地畝晶子、中島郁子(Alt.)、
   宮里直樹(Ten.)、今井俊輔(Bar.)、清水那由太(Bas.)
合唱/東京ユヴェントス・フィルハーモニー合唱団(合唱指揮/谷本喜基、吉田宏)
児童合唱/NHK東京児童合唱団
管弦楽/東京ユヴェントス・フィルハーモニー
指揮/坂入健司郎

二〇一八年九月一六日 ミューザ川崎

 プログラム冊子によれば、二十歳に満たない頃にこのオーケストラを結成してから十周年ということなので、指揮者は三〇歳位か。オケも指揮者も若くて勢いがある。アマオケがマラ八をやると、安全運転の演奏を聴かされることが多いが、この指揮者は思いきったテンポの変化など、表現意欲に溢れていて素晴らしい。プロフィールを見ると音大やコンクールとは無縁な異色のプロフィールなので、今後プロオケの役付きになったりするタイプではないのかも知れない。しかし、二十歳でアマオケを組織してしまう、この無鉄砲な若者の指揮は、最近の若手指揮者に希薄な「オレはこういう風に演奏したい」という欲求が感じられて、彼が指揮する他の曲も聴いてみたくなる。
 そして、このマラ八で改めて感じたのは児童合唱の大切さ。やはりNHK東京児童合唱団(N児)は上手く、何より人数が多い(一〇〇人位)。日本の児童合唱もレヴェルが上がって上手い団体が増えたが、単独でこの人数とレヴェルを揃えられるのはN児だけだろう。やや非力な混声合唱(二四〇人位)に比べて抜群の安定感で、児童合唱が出てくると安心するという、普段と逆の現象が起こっていた。
 オーケストラは一八型くらいの絃を対向配置にして、コントラバスを正面奥に配置。ハープ三、マンドリン三、鍵盤楽器、ホルンを下手、打楽器とホルン以外の金管が上手。独唱は舞台の一番奥。金管のバンダは、第一部はオルガンの演奏台に、第二部は客席に配置。栄光の聖母は上手のバルコニー席。ティンパニは一対で、第一部のzu2は両手打ち、第二部は二台打ち。第一部のチューブラーベルを、二回目(変拍子の所)だけ鉄板と重ねていたのが面白かった。
 私の席は一階席だったのだが、舞台一番奥の独唱陣が全然聞こえなくてバランスが悪かった。ミューザ川崎は三階席がベストという噂を聞いたことがあるが、数多くマラ八を聴いてきて、やはりオケと合唱に埋もれがちな独唱者は、舞台前面に配置する方がいいと思う。
 オーケストラの並べ方にも、演奏表現にも、指揮者の「こうやりたい」という思いが表れており、近年のマラ八の中でも印象の強い演奏会であった。それにしても日本のアマチュアオーケストラはレヴェルが高くなった。採算度外視で出来るアマオケこそ果敢にマラ八を取り上げてほしいものだ。

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2018年9月11日 (火)

混声合唱団ホール・バルティカ&相愛フィルハーモニア特別演奏会

混声合唱団ホール・バルティカ&相愛フィルハーモニア特別演奏会

グリーグ/「ホルベアの時代から」組曲
マーラー/交響曲第八番変ホ長調

独唱/平野雅世、泉貴子、内藤里美(Sop.)、山本真千、大賀真理子(Alt.)、
   松本薫平(Ten.)、藤村匡人(Bar.)、松岡剛宏(Bas.)
合唱/混声合唱団ホール・バルティカ
児童合唱/池田ジュニア合唱団(指導:しぶやかよこ)、
     相愛大学附属音楽教室(指導:弓庭登美子)
管弦楽/相愛大学大学院音楽研究科<相愛フィルハーモニア>
指揮/河﨑聡

二〇一八年九月一〇日 フェスティバルホール

 二〇一八年マラ八ラッシュの第一弾は大阪の混声合唱団ホール・バルティカと相愛大学大学院音楽研究科<相愛フィルハーモニア>の特別演奏会。関西のアマチュア合唱団と音大オーケストラなので、申し訳ないが予備知識はゼロ。

 近年はアマチュア合唱団の実力が上がっている。ホール・パルディカという合唱団も、自主公演でマラ八を取り上げるだけのことはあって、声量はあるし、十分に練習している感じで、レヴェルの高い合唱だ。一方、児童合唱は頑張っていたが、混声合唱にかき消されがちだった。もっともこれは席の問題(一階前方)かもしれない。フェスティバルホールは大きさの割によく響くホールだが、まだ二回目なのでどこに座ればいいのかが判らない。
 オーケストラも健闘。時に金管がひっくり返ったりしたものの、よく頑張っていたと思う。七人のソリストも大健闘。特に良かったのは第一ソプラノとテノール。大抵の歌手が叫んでしまう、最後の神秘の合唱のハイCの音を、ノン・ヴィブラートのピアニシモで唱いきった第一ソプラノが素晴らしかった。
 指揮者は大変判りやすい棒で、大編成をしっかり纏めていた。テノールが一小節ズレたり、独唱陣が一瞬ヨレヨレになったりする場面はあったが、それ以外に大きな事故も無く、手堅い棒であった。しかし、この演奏会で不満が残るとすればやはり指揮者であろう。アマチュア相手にマラ八をやる場合、仕方ないのかも知れないが、事故を恐れてひたすら安全運転に徹してしまった感じがする。ルバートやタメが一切無い音楽作りは、手堅いと言えば褒め言葉だが、つまらないとも言えると思う。その一方で、私が一番許せないと思う、第一部最後のテンポを煽りだけはやってくれてた。他でテンポをいじるようなことが一切無いので、合唱が唱いきれないから誤魔化したと、勘ぐりたくもなる。
 その他備忘メモとして、ざっと見渡したところ、合唱は混声合唱が約二百、児童合唱が六十。オーケストラは十四型くらいで、ハープ二、マンドリン二。ティンパニは一人で、第一部第二部ともzu2は両手打ち。但し装飾音符的な打ち方をしていた。席の問題でよく見えなかったが、シンバルのzu2、zu3は一人で叩いていたようだ。絃楽器が対向配置のため、打楽器とホルンは上手側。上手ホルンは八〇年代までよく見られたが、近年では久しぶりに見た気がする。

 アマチュア合唱団と音大オケの演奏会としてはレヴェルの高い演奏会だったと思う。これを纏め上げた指揮者の手腕は賞賛されるべきだが、一方で指揮者の表現欲のようなものが感じられれば更に良かったと思う。

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2018年9月 3日 (月)

マラ八ラッシュ

 このブログの過去記事をご覧いただければ判るが、私は自称「マラ八マニア」である。つまりマーラーの交響曲第八番(通称「千人の交響曲」)が好きで、この曲が演奏されると聞くと、何はともあれ聴きに行くという偏執狂である。
 私の知り得た限りで、この曲は一九四九年の日本初演以来六十三回演奏されている(同じ演奏者による連続公演は一回と数えて)。年代別に見ると一九四〇年代一回、一九七〇年代三回、一九八〇年代十二回、一九九〇年代二十三回、二〇〇〇年代十五回。二〇一〇年代は二〇一八年八月現在十二回である。一九八〇年代以降、概ね年一~二回というペースである。ちなみに私は初めて聞いた一九八五年のコシュラー/都響以来二十四回、二〇〇八年以降は部分演奏を除き全て聴いている。いつの間にか「国内で(全曲)演奏される時は必ず聴きに行く」という自分ルールが出来てしまった。パスポートが無いので臺北での公演は諦めたが、パスポートがあったら行っていたかも知れない。
 そんなマラ八マニアにが困る事態がこの秋起こっている。千人ラッシュと言うべき状況が国内で発生しているのだ。この秋、マーラーの交響曲第八番を取り上げる演奏会を日付順に並べてみる。

・混声合唱団ホール・バルティカ&相愛フィルハーモニア特別演奏会
 九月一〇日フェスティバルホール
 河﨑聡指揮/相愛大学大学院音楽研究科<相愛フィルハーモニア>ほか

・東京ユヴェントス・フィルハーモニー創立10周年記念演奏会
 九月一六日ミューザ川崎
 坂入健司郎指揮/東京ユヴェントス・フィルハーモニーほか

・九州交響楽団第三七〇回定期演奏会
 九月二二日アクロス福岡
 小泉和裕指揮/九州交響楽団ほか

・びわ湖ホール開館二〇周年記念マーラー作曲交響曲第八番変ホ長調「千人の交響曲」
 九月三〇日びわ湖ホール
 沼尻竜典指揮/京都市交響楽団ほか

・東京芸術劇場 井上道義&読売日本交響楽団 マーラー/交響曲第八番『千人の交響曲』
 一〇月三日東京芸術劇場
 井上道義指揮/読売日本交響楽団ほか

・関西グスタフ・マーラー交響楽団第八回演奏会
 一〇月八日京都コンサートホール
 田中宗利指揮/関西グスタフ・マーラー交響楽団ほか

・名古屋フィルハーモニー交響楽団第四六一回定期演奏会
 一〇月一二、一三日名古屋市民会館
 小泉和裕指揮/名古屋フィルハーモニー交響楽団、中部フィルハーモニー交響楽団ほか

 何と約一ヶ月の間にマラ八が七回も演奏されるのである。勿論、自分ルールに縛られているので、全ての公演のチケットを入手し、遠方の公演については往復の交通手段もほぼ確保した。準備は万全である。ちなみに時期は少し先になるが、来年一月のバッティストーニ/東京フィル(新宿文化センター)もチケットは押さえている。
 七つの公演の内、アマチュアは川崎と京都。大阪はプロではないが音大のオーケストラ。これらは全く未知数で、どんなレヴェルなのか楽しみだ。びわ湖は沼尻京響だが、新星日響を振っていた頃は優等生的で面白くなかった沼尻が、久々に聴くと化けるのか否か。井上のマラ八は名古屋のアマオケで聴いて失望したが、普段振らない読響の依頼公演、期待するべきではないだろう。やはり楽しみなのは九響と名フィルを振る小泉和裕。この指揮者はスターではないが、ガッカリさせられたことがない。派手さや外連は無いが、キッチリ納得出来る演奏をしてくれる指揮者だ。マラ八を振るのは初めてだと思うが、どんな感じに纏めてくれるのか。両オケとも定期公演なので、そんなに悪乗りはしないであろうが、小泉さんにそんなことは求めていない。
 聴いた感想はここにアップするつもりだが、極端にひどい演奏だった場合は聴かなかったことにしようと思う。プロのオーケストラだとそんなことは無いのだが、アマチュアオケや合唱団の演奏を批判すると(批判するのはアマオケを振ってギャラを受け取っている指揮者で、私はアマチュア演奏者を批判しません。)、関係者から非難のコメントが殺到するからである。
 マラ八はある意味、上演していただけるだけで有り難い曲である。それをこんな短期間に立て続けに聴ける機会は二度と無いだろうと思う。幸運に感謝しながらそれぞれの演奏会を聴きに行こうと思っている。

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