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2018年9月23日 (日)

九州交響楽団第三七〇回定期演奏会

九州交響楽団第三七〇回定期演奏会

マーラー/交響曲第八番変ホ長調

独唱/並河寿美、大隅智佳子、吉原圭子(Sop.)、加納悦子、池田香織(Alt.)、
   望月哲也(Ten.)、小森輝彦(Bar.)、久保和範(Bas.)
合唱/九響合唱団、九州大学男声合唱団コールアカデミーほか
児童合唱/NHK福岡児童合唱団MIRAI、久留米児童合唱団、筑紫女学園中学校音楽部
合唱指揮/横田諭
管絃楽/九州交響楽団
指揮/小泉和裕

二〇一八年九月二二日 アクロス福岡シンフォニーホール

 やはり格が違う。九響は決して一流のオケとは言えないが、やはりアマオケや音大オケとは違う安心感があり、小泉和裕のどっしりした音楽作りと相まって、安心して聴ける。混声合唱はオール福岡的な寄せ集めだが、それを感じさせない纏まりの良さは特筆に値する。おそらく全体を纏める合唱指揮者が相当入念な練習を重ねたのだろう。N児福岡を中心の児童合唱も高いレヴェルだった。
 小泉は基本的に奇をてらうようなことはしないが、ここ一番で見せる思い切ったためや、極端にではなくぐっとテンポを落としてじっくり聴かせる部分など、いぶし銀の棒だ。第一部の最後、金管バンダが入る部分でテンポを上げて台無しにする浅はかな指揮者が多いが、小泉はテンポを落として始まり、合唱や金管の上行音階をしっかり聴かせつつ徐々にテンポを上げていくという、思わず「その手があったか!」と唸ってしまう処理を、ごくごく自然に行っていた。ここだけ聴いても凡百の指揮者とは次元が違うのだが、それを派手に見せるのではなく、当たり前のようにやってしまうところが凄い。
 以下、気づいた点を列挙する。絃は一六型、ピッコロ二、ホルン九、ハープ二、マンドリン一。金管バンダは上手側三階バルコニー席、栄光の聖母は三階席正面(多分)。独唱はオケと合唱の間。アクロス福岡は張出を使うとかなり舞台が広く、巨大な合唱台を組んでも舞台上に余裕があった。
 ティンパニは四台二組。第一部のzu2は両手打ち、第二部は片手打ち。チューブラーベルではなく鉄板を使用。シンバルの扱いが面白く、第一部の再現部手前(二人または三人同時打ち)は吊りシンバルを使わず合わせシンバル二人、再現部冒頭は合わせシンバル三人。第二部頭の合わせシンバルのピアニシモは、片方の縁でもう片方を擦り上げる奏法を使わず、大きなシンバルをそっと合わせていた。
 声楽陣はバランスが悪かった。特に第一ソプラノとテノールが不安定。テノールは縮緬ヴィブラートで自己陶酔的な唱い方が耳障りだった。第一ソプラノは途中までは良かったのだが、神秘の合唱のハイCをまさかの大絶叫して、まさかの息継ぎ。この曲の場合ソプラノとテノールは音域的に苦しいならオファーがあっても引き受けてはいけない。その一方で第二ソプラノが素晴らしく、第二部の罪を悔いる女のソロは鳥肌が立った。

 小泉和裕という指揮者は抜群の安定感だけではなく、それ以上の何かを持っている人だと感じる。それが派手なパフォーマンスや、太い政治力などならば一枚看板になるのだろうが、ピッチャーで言うと中継ぎのエースという感じだろうか。東京では都響にポストがあるが、なかなか聴く機会がない。レパートリーが渋くて私の好きな曲とかぶらないせいもあるが、もっと聴きたい指揮者だ。来月の名フィルが待ち遠しく感じる。

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