オーケストラハモン第50回記念演奏会
オーケストラハモン第50回記念演奏会
二〇二五年六月一日すみだトリフォニーホール
独唱/中川郁文、冨平安希子、三宅理恵(ソプラノ)、花房英里子、山下裕賀(アルト)、
糸賀修平(テノール)、小林啓倫(バリトン)、加藤宏隆(バス)
合唱/Chorus HA’MON(世話役:廣瀬泰文)、
ジュニア合唱団・Uni(合唱指導:中島はるみ)
管絃楽/オーケストラハモン
指揮/冨平恭平
マーラー/交響曲第八番変ホ長調
一九九七年発足のオーケストラハモンというアマチュア・オーケストラがマーラーの交響曲第八番(以下「千人」)を演奏するというので聴きに行った。国内で「千人」が演奏される場合は出来る限り聴きに行っているのだが、一月の兵庫県立芸術文化センター管弦楽団は三公演もあったのにチケットが取れなかった。オケもホールもどんな感じか聴いてみたかったのに残念だ。
アマオケが千人をやるのにハラハラしないで聴けるというのは、すごい時代になったと思う。四十年近く前に初めてアマオケで聞いた千人は感動とスリルの大スペクタクルだった。もちろんアマオケだから金管がひっくり返ったりする小さな落っこちは散見されたが、びっくりするようなミスはオケ、声楽ともに起こらなかった。何よりも指揮者が遅めのテンポを基調にしながら、ルバートしたり煽ったりせず、キッチリと分かりやすい棒で全体を纏め上げていたのが安心の理由だろう。
混声合唱は常設の団体ではないようだがレヴェルは高く、人数の割に声量は十分だった。一方で、ピアニシモの部分もメゾピアノ程度で唱わせるのは指揮者の判断だろう。あくまで安全第一の音楽づくりだ。児童合唱は発声が素晴らしく、所謂黄色い声を出さず大健闘だったが、如何せん人数が少ないうえにオルガンバルコニーに乗せられて客席から遠いので、混声合唱と絡む部分ではほぼ聞こえなかったのは残念。せめてソリストの後ろならもう少し聞こえたのではないだろうか。
独唱陣も健闘していた。第一第二ソプラノはやや発音が悪かったのが残念だが声量は十分。アルトの二人は文句無し。バリトン、バスも声量は苦しかったが健闘していた。そして今回特別大書したかったのはテノールの素晴らしさ。ドラマティックな声質ながら、ヴィブラートを抑え気味にした発声は、正にこの曲には最適。何ヶ所かの高音の難関も、何とか唱い切って見事だった。
備忘録として、オケの並びは絃がバスが下手の対向配置で十六型くらいの人数。上手側にハープ三台と鍵盤群、マンドリン一。木管は二列目が下手ファゴット、上手クラリネット。金管は下手からチューバ、トロンボーン、トランペット、ホルン。バンダはオルガンバルコニー下手側。混声合唱は全部で二百人ほど。オルガンバルコニーの上手側に児童合唱二十名強と第三ソプラノ。独唱陣はオケと合唱の間。ティンパニは二対で両手打ちは第一奏者のみ。私の席は一階席の中央だったが、やはりこの曲の場合、独唱陣は舞台前面に配置した方が客席からは聴きやすいと思う。
ぜいたくを言えば、もう少し攻めた演奏を聴きたかった気もするが、オールアマチュアでこれだけの完成度は立派だと思う。日本のアマオケ、合唱団のレヴェルの高さに感心した。
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