ルイージの千人
NHK交響楽団第二〇〇〇回定期公演
二〇二三年一二月一六日(土)NHKホール
マーラー/交響曲第八番変ホ長調「千人の交響曲」
独唱/ジャクリン・ワーグナー、ヴァレンティーナ・ファルカシュ、三宅理恵(ソプラノ)、
オレシア・ペトロヴァ、カトリオーナ・モリソン(アルト)、ミヒャエル・シャーデ(テノール)、
ルーク・ストリフ(バリトン)、ダーヴィッド・シュテフェンス(バス)
合唱/新国立劇場合唱団、NHK東京児童合唱団
管絃楽/NHK交響楽団
指揮/ファビオ・ルイージ
N響の第二〇〇〇回定期公演を聴く。コロナ以降初の「千人」なので聴き逃がせなかった。N響の千人は一九四九年山田和男、一九九二年若杉弘、二〇一一年デュトワ、二〇一六年P.ヤルヴィに続く五回目。
久々のNHKホールは張り出し舞台を最大に出して、音響反射板を一間程後ろに下げた状態(デュトワの時と同様)だが、編成はオケが十六型で、ハープが四台いる以外は最小編成。混声合唱は約一二〇人、児童合唱は約五〇人で、舞台上全部で三百人くらい。おそらく千人を上演するには最少の人数。なお、ティンパニは二対で両手打ちは無し。
とにかく声楽が重要な曲なので、合唱の出来が重要なのだが、新国立劇場合唱団はさすがプロと感心させられる出来。正に少数精鋭という感じで素晴らしかった。児童合唱も安心のN児。人数もそこそこいるので、埋もれることなくしっかり聞こえていた。これは当たり前なのだが、日本国内では児童合唱を揃えるのは大変だから、N児がキャスティングできれば間違いないのである。
一方独唱陣は酷い。ルイージの人選なのだろうか。第二ソプラノとテノールが特に酷く、中でもテノールは何とか唱い切ったレヴェル。声は悪いし、唱い切れない部分を誤魔化してばかり。ほぼブチ壊しに近い出来である。そして、第二ソプラノは単に下手。そして重唱部分ではフレーズの終わりがバラバラ。歌手も悪いが指揮者はもっと悪い。 オケも管楽器にミスが散見される注意力散漫な演奏。特にこの曲に沢山ある、フレーズの終わりでルバートして次で戻るような部分が揃わない。縦の線を合わせるという話ではなく、指揮者のやりたいことが奏者に伝わっていない感じがする。
ルイージの指揮は取り立てることもない。テンポは中庸で目立った外連も工夫もない。第一部の二六二小節(Accende~の部分)にかなり速いテンポで突入したので、オヤっと思ったが、合唱が唱い切れず、途中から普通のテンポになってしまい消化不良な気がした。一番の問題は、曲に対する指揮者の思い入れが感じられなかった所か。
N響レヴェルのオケになれば、千人も特別な祭りではなく、定期公演で取り上げる編成大きめの曲という程度なのだろう。二〇〇〇回だから特別という感じは無かったのは構わないのだが、独唱陣の力不足で不出来な演奏というイメージが残ってしまった。久々の千人だったのに途中で飽きてしまい、早く終わらないかなあと思ってしまった。何とも残念である。
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